しかしネットによる情報検閲には熱心な一方で、オーソドックスな部分で防諜が十分ではないのではないかと、素人ながらに思う節もある。出張の際に六の宿泊施設で試してみたうち、パスポートチェックをしたのはわずか一カ所だけであった。(なおハングルはしゃべれないので、あきらかに外国人と分かったはずである。)さらに国内交通機関の中での旅券検査も全くなかった。
滞在したのはソウルと束草(ソクチョ)という市などであるが、このソクチョなどは、日本海(韓国名として「東海(トンへ)」が主張され、表記について争われている)沿岸で北朝鮮との国境から62キロの港街である。かつて北朝鮮の潜水艦侵入事件があった地点よりもさらに38度線へ近く、ロシアおよび中国との航路が就航し、また朝鮮戦争の際に現在の北朝鮮側から逃亡してきた人々の集落もある。
筆者の経験する限り、途上国であっても外国人の宿泊者は韓国以外では必ず旅券をチェックされる。これはいうまでもなく身元不詳の外国人によって何かないように備える意義がある。(日本でも旅館業法6条で宿泊者名簿の作成が義務づけられている。)
また中国などは、入境後にも、国境の街・ラオカイから搭乗したバスの中でも警察による再度の検問がありID・パスポートを再度チェックされた。(2009年の夏に、中越国境紛争の人民解放軍侵攻ルートをベトナム側から逆に遡り、雲南省の昆明へ向かった際の経験である。)
さらにソウルでも中国系の「朝鮮族」(中国に移民した韓国系の人々の、帰国したもの)が大規模な「朝鮮族街」を構えており、そこに宿泊してみたがやはり旅券の提示は不要であった。つまり韓国はネット監視には熱心だが、人の移動についてのベーシックな管理はなされていないという脆弱性がある。(加えて言うと、これらのホテルで室内に備え付けられていたPCは、ウィンドウズXP機が多かった。いうまでもなくサイバー攻撃の踏み台などになりやすい。)
(その後の森川社長・ブログ記事より。東大のIT系教授らに、LINEをインストールしてもらったそうである。)
つまり、韓国政府は情報収集に関して、(阿部重夫氏が述べられていたのとは裏腹に)「攻めに強く守りに弱い」国かもしれない。実際、ファクタ報道においても韓国政府の取得したLINEのデータは中国企業に漏れていたとされる。また、そもそも傍受問題が発覚したのは韓国国家情報院が日本政府にバラしてしまったからである。
なお最後に、人事面から現在の、韓国政府の対日政策について推し量りたい。現在の在日大使李 丙琪(イ・ビョンギ)氏は、次の国家情報院の長官に就任することが決定している。キャリアのローテーションは基本的に、継続性をもっていることが多いことからすると、駐日韓国大使館の業務も、次期国家情報院長(旧KCIA長官)が行うような情報収集・宣伝活動に重点が置かれていた蓋然性が高い。
* 存否自体が問題になる文書について、このような措置がとられる。今回の件については、相場観として普通の対応である。ただしこのようなケースでも場合によっては意図的に、政府機関が不開示のはずの情報をリークする場合もある。
** あまり知られていないが、東証の上場審査機関である自主規制法人(JPX)は、コンプライアンス遵守などに関して、一般からも各種の情報提供を受け付けている。
【編集長 江藤貴紀】
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