いわゆる「まとめサイト」については、検索上位に来るにもかかわらずそのコンテンツの薄さや見難さ、他人の書き込みを利用して金儲けをしているなどとして嫌う一部のネットユーザー存在した。彼らによれば、NAVERやLivedoorが運営するのは2chの著作権侵害的なコピーサイトであって、Googleアドセンス等の利用規約に違反しているはずだが、なぜGoogleなどのアドセンス広告が外されないのかという疑問がわき上がっていた。
その説明としてはLivedoorは「プレミアムアドセンス」という特別な広告規約をGoogleから得ているから、といわれていた。しかし現実の理由はもっと単純かもしれない。それは単に、2ちゃんねるがLivedoorとNAVER両方を運営するLINEのビジネスパートナーとして、容認する契約を結んでいたから、というものだ。
(LINE社の広告資料にはNAVERまとめ、LivedoorがLINEスタンプとともに名を連ねる。)
じつは、いまのLivedoorは堀江貴文氏の手から離れた後、LINE社(前身ははNHN Japan社・ハンゲーム社)に買収されている。そしてこのLINE社と、2ch管理人だった西村博之氏の間には、以前の確執をきっかけとして現在は容認されているパートナー関係が存在し、双方の企業グループで「情報の流通サークル」を形成しているのだ。
実は、いまは無料メッセと通話サービスのイメージが強くて認識されることが少ないが、LINE社はグループとして、買収したポータルサイトのLivedoor、NAVERまとめ、さらにまとめブログに多用されるライブドアブログを有する2ちゃんめる「まとめサイトビジネス」の中核企業である。それだけでなく、ニュースライト「Livedoorニュース」向けの記事の配信をひろゆき氏関係企業で、2ちゃんねるの運営に携わる未来検索ブラジル子会社運営の「ガジェット通信」から受けてそれを拡散する役割を持つ。
一方で2ちゃんねるは、かつていわれていたような個人掲示板ではなく実質的に企業グループの運営する巨大掲示板であり(特に、今年の2月に分裂騒動が起きるまでひろゆき氏らが運営していたもの)は、ログの監視ビジネスへの提供、削除に関して「未来検索ブラジル」ないし「東京プラス」等を通じて行う。そして30%のコミッションで(ニコニコ動画のドワンゴ社を通じて)まとめブログの運営を斡旋する一方で、未来検索ブラジルとほぼ同一従業員、敷地で構成される東京産業新聞社の「ガジェット通信」を通じてLINE社のポータルサイトのライブドアニュースへ記事を配信する関係にある。
つまり、両者はマッチポンプ的に(1)ニュースソースのガジェット通信およびLivedoorニュースを通じた作成をLINEが行い(2)ひろゆき氏および関係企業が、2ちゃんねる上でのスレッドの作成とホットリンク社などを通じた削除サービスを行う(3)そしてLINE・2chの双方でコミッションを分配する形でのまとめブログの作成と斡旋を行う情報コングロマリットの関係を持つ。要は、この2つの企業グループ間でのサイトで、検索結果上位のサイトを作成してネット上に流通する情報をコントロールできるということだ。以上の閉じたスキームが、ネットで広まる世論形成に大きな力を有してきたことは疑いがない。
なお実は、LINE社の提供するNAVERまとめには複数のオプションがある。第一が「スポンサードまとめ」と呼ばれるもので、これについてはスポンサー名の記載が必須である。しかしもう一つ「PRまとめ」というオプションもあり、こちらのほうはスポンサーの記載が不要である。当然だが、どちらも作成を依頼するとLINE社へ広告委託料が発生する。
ちなみに、NEVERまとめは押しつけがましくない「第三者話法」という表現を売りにしているが、ようはこれは「一般ネットユーザの声の都合のいい部分をクライアントの意向に沿ってまとめたいわゆる「偏向まとめ」」や「ステマ」(ステルスマーケティング)の言い換えである。(以上の掲載されたLINE社の媒体資料はこちらをクリックしたページから入手できる)
(まだ「スポンサードまとめ」のほうは広告主の名前が出てくるので潔い。問題は下の画像である。)
(「PRまとめ」についての媒体資料。「スポンサードまとめ」と異なり、広告主名を明らかにする必要がない「ニュース記事」と堂々と言われている。筆者の理解では、広告料をもらって書いたことを明示せず「ニュース」をうたう記事は、「ステマ」である。)
また2ちゃんねるやまとめサイトの書き込みデータはホットリンク社が、未来検索ブラジル・東京プラス(いずれも西村博之氏、竹中直純氏らが取締役)などと提携して販売するいっぽうで、「都合の悪い書き込みについて対応する「風評被害バスターズ」というサービスも行っている。以上はいずれも、顧客から料金を徴収してその評判を上げ下げするというビジネスモデルである。
以上の2ch・LINEのビジネスパートナー関係は公表資料を読み込めば分かるものの最近まで筆者にもつかみ切れていなかった。しかし、Code Monkeyという今年2月以降2ch.netを元米軍のJim氏とともに制圧した人物の「ライブドアとひろゆきは契約をしてる」という発言をきっかけに調査が開始された。
すると腑に落ちることがいくつかある。いま現在、2ちゃんねるは2ch.netと2ch.scの両者に分裂(後者を今年の4月13日から、2ch.netのコピーサイトとしてひろゆき氏らが開設)した状態にあるのだが、(1)ヤフーニュースに配信されたR25の記事と(2)LINE社の運営するLivedoorニュースにおいて2ちゃんねるが「2ch.sc」と記述して引用されていたため著作権法違反の共犯ではないかなどという指摘がユーザから上がったことがあった。
(2ch.scを2ちゃんねるとして紹介するライブドアニュースの記事。なお、ガジェット通信からの配信以外でもライブドアニュースは2ch.scを2ちゃんねるとして扱っている。)
この対応について、ヤフー・リクルートについては、本紙などの指摘を受け、「sc」の記述を2ちゃんねるに直す措置が執られた。しかしながらLINE社では問い合わせに対して、何の応答も見られなかった。一方で、上述したようなLINE社〜ひろゆき氏の(旧)2ちゃんねるグループの密接なビジネス関係を考慮すると、2ch.scをLINEがプッシュするのは当然といえる。
一般にメディアには公平、中立性があった方が望ましい、とされる。しかし少なくともライン社のニュース記事はお金で動くので、無色中立、などと思っていると大きな間違いを見ることになる。(なお、ライブドアニュースは余り普通のユーザーが見ないと思われる割に、2ちゃんねるで記事のソースになっていることが多いと感じている。)
もし、これが「まとめサイトビジネス」のため集めた書き込みを利用するもくろみならば、利害関係者が「スレ立て」をしていても全くおかしくない。(ちなみにホリエモンのツイッターも、とてもよく「スレッド」のソースになる。)
(ラインの運営する「NAVERまとめ」の記事例である。「かつてのヤフー株のように億万長者になるのはあなたかもしれない。」とある。ネイバーまとめをLINEが運営していることを知らない人は、そういうものかなと思ってしまうかもしれないが、「第三者話法」というのは筆者には気味が悪い。ちなみに、以下の通り、NAVERの求人採用ページにはアルバイト職で「NAVERまとめの編集」というものがあるので、NAVERまとめ記事の中にはLINE社員が書いたものもあるようだ。ただし、どの記事が社員の書いたものかは分からない仕組みになっていて、やはり不透明である。)
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