無料通話とメッセージアプリで知られるLINE(旧・NHNであり、韓国企業NAVERの日本法人部門)が、韓国政府の諜報機関・国家情報院(前身はコリアンCIA)に全ての日本人データを提供しているという報道がされた問題について、本紙が同社へ確認したところ、回答できないという返答が6月24日に返ってきた。
この問題は、6月17日にFACTAが、日本政府の関係筋と韓国国家情報院ことナショナル・インテリジェンス・サービス(NIS)との会談内容で明らかになったとして報じたもの。それについてLINE社は、コーポレートサイトではなく森川社長のブログで暗号化等の規格は万全であるとして、事実関係を全面否認していた。
そのため、その根拠について日本政府関係者や韓国政府関係者へ確認をしたかどうか、また同社が主張するところの世界水準の暗号規格が何であるか、その暗号化は全ての通信について行なわれているか等について6月18日と6月23日に質問した。そのところ、暗号規格名については返答不能であることと、「日本政府・韓国政府の諜報機関へ事実確認をしたかどうかについても返答不能」である旨の回答を6月24日に同社の桃木耕太氏から受けた。
以上は、別に確認したか否かは返答しない理由が特に見当たらない項目も含まれると思われる。なのに簡単な事実関係の確認についても、何らの主張立証を行なわないこと等からすると、LINEの否定する韓国政府の傍受について、説得力が欠ける。月並みではあるが、LINE社は、広く普及しているアプリケーションの発行元として、自社の状態に問題がないならば積極的に主張してしかるべきと思われる。
なお、6月19日にFACTA発行人の阿部重夫氏は、LINE社は韓国政府に傍受された被害者であるはずだからそれを抗議してしかるべきであり、もし抗議しないならば自社が実は韓国の会社であったことを認めることになるのではないかと、森川社長へ反論している。
積極的な反論が可能な状況なのに、何も言わない(あるいは、言えない)こと自体がLINE社の主張から説得力を奪っているように思える。しかしながら、他メディアの報道はずいぶんとLINEに甘く、例えばITmediaは「更に混迷を深めそうだ」とお茶を濁していて酷い。またCNET記事はITmediaほどは酷くないが、政府に確認したのかとの疑問点は触れていない。他社報道にたいして失礼ながら、全く参考にならなかった。
6月26日追記: LINE社の回答が当てにならなかったので、直接に内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)へ、FACTA報道の通りLINEを傍受していると韓国政府が認めたのか否かを、LINE社がきちんと確認したのかについて、問い合わせ中である。
8月22日追記: NISCから帰ってきた情報公開への返答によると、LINE社から韓国国家情報院による傍受の有無についてのNISCへのやり取りに関してはLINE社からの問い合わせの形跡を知ることの出来る文書は「不存在」ということであった。つまりLINE社は顧客データを守るための努力を果たしていないか、あるいはそもそもその気がなかったということになる。
【編集長 江藤貴紀】
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