福島第一原子力発電所の汚染水流出をどう食い止めればよいのか、これについて技術的な課題と費用調達の両方が問題となっている。技術的な面については凍土壁の採用が検討されているが、前例がないともいわれている。ではなぜその方法をいま政府があえて採用するのか、他の対策もあるのではないかーー。また金銭負担も今のままの方法でよいのかーーこの2点について、事故直後に民主党で原子力事故担当の首相補佐官となっていた馬淵澄夫氏が10月18日、外国特派員協会に招かれて行った講演の中で語った。
民主党政権の元・責任者である彼は現在の政府に対してどのような提案を行うのか、また事故直後の政府内部や東京電力との議論はどうだったのか、語られたことをお伝えしたい。
「こんにちは。今日は汚染水問題に端を発する東京電力の救済スキームについて、これからの臨時国会でも議論になると思います。なので、そのことを踏まえてお話をさせていただきたいと思います。まず福島第一原発の汚染水の流出についてですが、私は2年半前3月26日に、国土交通大臣を辞めた後でありますが、総理補佐官に任命されました。それは福島第一原子力発電所事故担当としてです。
当時、陸海空に放射性物質が漏れ出ていました。これをすぐに止めなければいけない、これが私の最大の仕事でもありました。残念ながら今も漏れ出ているようでありますが、今日においてどうして収束していないかも含めたお話をしたいと思います。
三回の水素爆発が起こり、そして冷却機能の喪失がして、結果として大量の汚染水がたまっているというのが、当時の状況でした。当時私はプロジェクトの責任者として、この汚染水が地下水と混ざって海に漏れ出るのではないか、そのことを最も懸念していました。そこで、地下水の解析を行なって、この地下水と混ざり合って海に漏れ出る可能性があることを確認して、それを止める、遮水するその手段を検討しました。
当時ですね、地下30メートルまで掘り下げて、幅30センチから40センチの溝をですね、これを1号機から4号機までの四方に掘り下げて、壁を作るということを考えました。地下30メートルには粘土層があって、地下水がそれ以上深くには入り込みません。この四方を壁で囲む遮水壁という工事ですが、見積もりはおよそ1000億円でした。