佐藤優 「はい、どうもこんにちは。この麻生発言なんですけども、麻生発言だけを分離して取り上げてもよく見えないんですよ。それで、麻生発言の背後にあるのは、今の自民党政権の特徴なんですけども、反知性主義です。Anti intellectualismです。どういうことか。反知性主義っていうのは、教養の水準が低いとか、高い教育を受けていないっていう意味じゃないんです。大学教育を受けていても、外国に留学していても、司法試験に合格していても、外交官試験に合格していても反知性主義になるんです。
具体的な事実、実証性ということを無視して、ものごとを主観的な願望によって解決しているものです。政治家はそれで自分の権力基盤を強化できると思うんだったら、いつでも反知性主義に転換します。ですから、『俺は反知性主義者だ』と、こういう風に言うとなんか「俺は馬鹿だ」と言って歩いているみたいですね。本質はそういうことなんですけど、それは絶対に反知性主義者、有能な反知性主義者は言いません。これはファシストは絶対自分のことをファシストって言わないのと一緒です。
反知性主義は決断の政治家とか、決断主義というかたちで必ず表わされる、出てきます。決断主義っていうのは裏返して言うと、つべこべ言うな。事実が問題じゃない。やるかやらないかだと。勝つか勝たないかだと。この気合いの中で出ているのが麻生発言なんです。
麻生発言は、全体を通して見れば主旨は明白だ。全体を通して見ると、明らかに肯定的にいったんですよ。普通の文法で読んだら。それだから全体を通して読めば、これはナチスを批判したのは明白だという、そういう狂言が通るということに全世界が腰を抜かしているわけです。プラス、それに合わせて、今の官邸のこの問題に対する最大の問題はあるんです。
ここで、今の政治情勢をみるうえで凄く重要な古典的な著作があるんですね。スチュワード・ミルズって言う人がだしている、「パワーエリート」っていう本です。これは1956年アメリカで出まして、今も東京大学出版界で、上下が1冊2,300円ぐらいずつで出てます。買うに値する本です。どういうことか。アメリカにはパワーエリートっていうのが成立しているよ、と。
( オキュパイ・ウォール・ストリートの様子 © pathos.com)
権力を持っているエリート層で、それは、政界とウォールストリートのお金持ちと、それから公共軍人達、その軍人達が権力を実質持っていて、選挙でどういう風に変わっても、その軍人達の、その人たちの権力は動かない。またそれにくっつくようなマスコミ。それにくっついて小遣いを稼いでいるいわゆる有識者っていうのはわあっとくっついてくる。国民はそういうフィルターを通して情報を得るから、パワーエリート体制っていうのは簡単には崩れない。
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