1月の23日、新党大地の主催する催しで講演した「作家」佐藤優氏は、自身が受けた刑事裁判と取り調べの体験を語った後に、おもむろに北方領土問題に絡めた「フィクション」を発表した。同氏によれば「全く架空の話」だが個人的な私怨も創作の動機に入っているという。
「世の中には私が怖いっていう間違ったイメージがあります。しかし私、本当は優しいんですよ。だから報復もやられた範囲内でしかしません」したがって彼の行なう報復は自分の受けた被害に限られるらしい。しかしながら、佐藤氏によれば「私はマスコミにリークを受けて、3ヶ月間家に帰れなくなりました。そしてメディアスクラムにあって、カメラに小突かれて、郵便物も開封されて、その後ぱくられて、510日間独房に入れられたんです。横隣は死刑囚ですよ。外部とも面会は一切できなくて、それに冷暖房もない環境です。その後には7年間の裁判が待っていて、その費用には4500万円がかかって、外務省も失職になりましたね。有罪判決の結果で執行猶予が4年ついて、身動きも自由にできなかったんです。まあ、その範囲内の報復ですよ」ということである。この小説を朗読された内容を、以下に抜粋してお伝えする。
佐藤氏 最近私、小説『北方領土交渉』という本を出したんですけど、これは架空の人物の話ですからね。これはもう完全に小説ですよ。ただし「現実の北方領土交渉において、日本外務省で鍵を握るのが杉山晋輔外務審議官、専務担当、上月豊久欧州局長、上原秀樹欧州ロシア課長の3人だ。特に北方領土問題解決の戦略文書を実際に起案するロシア課長の労力と胆力によって、交渉が決まると言っても過言ではない。このことを念頭において本書を読んでいただくと、日本外交が抱える病理がなんであるかわかっていただけると思う。」とも書きましたけどね。
その後に小説の登場人物一覧があるんですね。’下月豊久’外務省ヨーロッパ局長という人がいますが、現実の外務省ヨーロッパ局長は’上月豊久’で、外務省ユーラシア課長で’久山英機’ですが、現実の外務省ユーラシア課長は’宇山秀樹’です。
こういった人たちが出てきて、終わりの方でなんかこんなやり取りになるんですよ。「今橋の話によると久山が大変なトラブルに巻き込まれているということだ。久山がロシア人の人妻と深い関係になっている。もっともその女性は夫とは別居状態ということだ。研究所に勤務している女性でインテリだ。子どももいる。人柄もいい人だ。久山はこの人妻と子どもの生活を支援した。複数の大使館員が久山がロシア人女性と外資系スーパーマーケットで、買い物をしているところを目撃している。KGBとつながっている女性でなければ何も問題ないんじゃないか、人妻を離婚させて、結婚することをどうして久山は考えなかったのか。」
「一時は結婚を考えたらしい。しかしロシア人と結婚すれば完全に出世街道から外れる。」「構わないじゃないか、愛をとればいい。」
「外務官僚は自分の命の次に大切なのが出世だ。それから将来のキャリアがマイナスになることはなかなか決断できない。それにあの頃はソ連崩壊から間もないので、ロシア人と結婚した外務間は、旧ソ連以外の、アフリカか中南米の大使館に移動させられることが必至だった。そこで久山は思考停止に陥って、だらだらとその人妻との関係を続けていた。そしてある日人妻のマンションで事件が起きた。久山が人妻と同衾しているときに突然玄関の鍵を開ける音がした。ドアが開きロシア人の男が入ってきた。男は寝室の扉を開け、二人が同衾している現場に踏み込んだ。人妻と男は大声で言い争いをした。早口のロシア語なので久山は半分も意味を理解できなかった。
男が久山に向かって、別居はしていてもこいつは俺の女だといって、久山の頬をこぶしでおもいっきり殴った。久山の頭の中で火花が走った。同時に久山は腰が抜けてしまい、寝室のじゅうたんの上に座り込んだ。人妻が男にものすごい形相で文句を言った。男は不満を言いながら部屋を出て行った。人妻は、『ごめんなさい。愛するあなたにこんなつらい思いをさせて』といって久山を抱きしめた。その瞬間に久山の中で何かが吹っ切れた。外交官としてのキャリアを全て捨ててでも、この人妻と一緒になって新しい人生を歩もうと思った。しかしその翌日から不思議なことが起きた。激しい下痢が続いて起き上がることができないのだ。
腹の調子がよくないといって大使館を一週間休んだ。すると親しくしていた科学技術庁から出向していた白木二等書記官が尋ねてきた。『白木って福島原発事故の関係でよくテレビに出てる’保安院の白木審議官’のことか?確かモスクワに勤務したことがあるはずだ』と須藤が尋ねた。」須藤っていうのは’同盟通信’の記者ですね。そういえば・・・’黒木審議官’てテレビによく出てきませんか。そんな人いましたよね。あの人モスクワにいたことあります。
「『そう、その白木だ。』久山は自分と人妻の関係を白木書記官に話した。白木は出向者の自分では抱えきれない大きな問題なので、同じ経済班で親しくしている外務省プロパーの岩橋書記官に伝えた。岩橋はこれはやばいと思って僕に伝えてきたわけだ。『それでは佐田さんはどうしたの?』『久山をなんとしても助けなければならないと思った』そこで大使館ナンバー2の特命人権公使に相談した。この公使は以前ロシアの反体制が反則物件を渡したことがあるのでKGBからマークされ、ペレストロイカが始まる前ソ連が入国を拒否した人物なので、味方になってくれると思った。
『それでどうなった?』『公使は久山に女と別れろと説得した。久山はそれを飲んだ。だらしのないやつだ。愛よりも仕事にしがみついた。久山だけでなく、外交官はキャリア、ノンキャリアともひ弱なやつが多い。外務省を追われると生活ができなくなると過度におびえてしまう。そしてみっともないことをしてでも組織にしがみつこうとしている。』『それから久山はどうなった?』『見合い結婚をした。奥さんは久山とロシア人人妻との話を知らない。』」
この本を読んじゃったら大変ですよねー。「『久山は、佐田さんが公使に口をきいて事件をもみ消したことを知っているのか?』『もちろん知っている。それなりに感謝していた。もっとも久山の事件の揉み消しなど、たいした話じゃない。酩酊して車を運転して人身事故を起こして、逮捕された外交官の身柄引き受けと揉み消しをしたこともある。汚れ仕事にはかなり手を染めた。』
こういうような小説なんですよ。(笑)それで先にいきますと『矢部総理は北方領土問題の解決に意欲的だ。しかし取り巻きがよくない。特に内閣官房長官が基礎的な勉強をせずに、パフォーマンスだけで外交ができると勘違いしている。副長官と親しかった相模が自殺に追い込まれたことをもっと深刻に受け止めるべきだ。相模だって死ぬ必然性はなかった。』」こんな風に書いてあるんですよね。それで、この先のところでですね、杉田の話が出てくるんです。「『しかし杉田は確かイスラエルの学者を佐田さんが日本に呼ぼうとしたときストップをかけたことがあるんじゃないでしょうか。』『いやそうじゃない。日本国家の外務の妖怪と呼ばれているのは彼だが、杉田はむしろ僕たちの仕事に協力的だった。筒木さんとぶつかるようなことは避けていた。しかし佐田さんが逮捕されたときは検察に全面協力した。』『全面協力とはちょっと違う。検察としては外務省全体が筒木さんを恐れて、不正な手続きでテルアビブの国際学会の費用を支援委員会から支出するというシナリオをたてたが、杉田はそれには抵抗した。決済自体は正当だと主張した。』『佐田さんを守ったのか。』『それも違う。配島が起案し、僕がサインした決済書の内容に拒否があり、それを信じて外務省が決済をしたので、悪いのは佐田と配島で、サインをした杉田を含む外務省幹部は被害者だ、という論理を展開した。』
『すべてを佐田さんにかぶせようとしたのか、汚いやつだ。』『特に汚いわけじゃない、標準的な外務官僚というだけだ。だがこの話が書かれていることは気にしているようだ』『筒木さんの耳に入るようにしている。』『どんな?』『あの当時は上司の意向に従わなくてはならなかったので、筒木先生や佐田さんには心ならずもひどいことをしてしまいました。北方領土交渉を担当するようになり、過去の経緯について猛勉強しましたが、筒木先生のやり方が正しいということがよくわかりました、という話をしている。蝦夷新聞の記者からも同じような話が聞こえてきた。』『なんて白々しい、人間のクズだ。』『そうでもないだろう。杉田は本心を語っていると思うよ。僕も杉田に対しては暖かいメッセージを送るように心がけている。とにかく北方領土交渉が進めばいい。』『下月局長はどうだ。』『小心さが現れている。下月がいかに必死になって北方領土交渉を動かそうとしても手足がない。ユーラシア課が機能していない現状では、交渉の進展は期待できない。』『久山が課長をしているからか?』『端的に言えばそうだが、少なくとも久山がロシアの秘密警察から揺さぶられてフラフラになるシナリオだけはつぶしておかなくてはならない。』『どうやって?外務省の人事に影響を与えるすべはあるのか?』『そんなことなど考えていない。『しかし久山のような自己保身にこだわった人間にどう意見を与えるのか?』
『僕は作家だから警鐘を鳴らす作品を書く。論分やノンフィクションでなく小説だ。完全なフィクションでモデルがいないという形で書く。タイトルは小説:北方領土交渉にする。段階的にシグナルを出す必要があるので、書き下ろしではなく雑誌に連載することにする。連載のタイトルは外務省DT物語にしようと思う。』『DT?』『童貞の略語だ。作家の中村うさぎさんに教えてもらった。このタイトルならば、久山本人にメッセージがきちんと伝わる。また事実関係がすでに知られていれば、ロシアの秘密警察も久山を揺さぶることができない。それと同時に北方領土交渉の経緯と現状について多くの人に知ってもらえるようにしたい。』」と、まあこんな感じの本で、今のは全部私の頭の中で作った話ですよ。(笑)仮に似てるような話があるとしても、完全な偶然の一致なんですけども、ロシア課長が変わらないかぎり、北方領土交渉は不毛なんです。続けましょう。
「久山は帝国大学法学部を卒業した後北九州製鉄に就職した。この会社では帝大卒の将来の幹部候補生を最初の2,3年、現場で徹底的に鍛えるという伝統がある。まず始めに受ける試練は、ヘルメット酒だ。ヘルメットに日本酒をなみなみとつぐ。そして一気飲みを強要する。酒に弱い人なら急性アルコール中毒を起こすこともある。久山は酒はそれほど強くないが、エリート社員として生き残るために、ヘルメット酒を繰り返した。ところで、久山の同期に洛陽帝大法学部の出身者がいた。この同期は根っからの体育会系で、現場労働者とのヘルメット酒や猥談を心の底から楽しんでいた。
ヘルメット酒を2,3杯飲み干した後、オンリーユーの替え歌でオナニーの歌というのを絶叫した。オナニーそれだけを愛している、という調子だ。現場の人たちが大ウケする。それと同時に、久山に対して、あんたも何か面白い歌ができないのかと迫ってくる。久山も同期に合わせてオナニーの歌を唱和するが、そんな現場検証を毎日繰り返しているうちに、こんな会社にいては人生を無駄にすると確信した。そして会社をやめた。受験勉強には自信がある。司法試験を目指してもいいが、国内だけでなく、国際的にも活躍したいと思った。そこで外交官試験を準備し、合格した。外務省は久山にロシア語研修を命じた。外務省の研修生で国外に出ると女遊びにうつつを抜かす輩が少なくない。
久山の場合、高校時代大学時代も女性とつきあったことが一度もなかった。将来のエリートになる帝大法学部の学生だから、女には不自由しない。しかし久山は打算で近寄ってくる女とセックスをする気にならなかった。確かにいつまでも童貞であることはつらかった。しかし風俗産業で金を払ってまで筆おろしをするつもりもなかった。セックスは愛と結びついていなくてはならず、愛は結婚につながらなくてはならないと考えていたからだ。本当のことを言うと女性とのセックスが怖かった。初体験のときに女性から笑われるのではないかと不安だったのだ。」
こんなような感じのことを書いていますのでね、本人に聞いてみたいですね。こんな小説があるんですけど、身に覚えがないかと一回ぐらい聞いてみたら面白いと思うんですよ。こーんの宇山のやろう絶対に許さねえっていう話がいくつかあるんですよね。私も。ま、これも本の中にさりげなく入れてますけども。いずれにせよ、これ私怨でやってる部分と、国益のためにやってる部分がありまして、(笑)それがミックスされているわけなんですよね。これ宇山がいなければ私が捕まることはなかったんですから。それはともかくとして、今はとにかく国益のことを重視して、北方領土を解決するためにはこの宇山を変えないといけないんです。(笑)それにこれYoutubeにも貼ったんですけど文句があるならいつでも訴えて来いと。法的にはいつでも対応するから全然心配ないと。知ってる話はもっと宇山にはあると。
それでなんか世の中には私が怖いっていう間違ったイメージがあるんですよね。怖くなんか全然ないんです。どうしたらって私はやられた範囲内での報復しかしないんですから。マスコミにリークして、3ヶ月間家に帰れないで、メディアスクラムにあって、カメラに小突かれて、郵便物開封されて、その後ぱくられて、510日間独房に入れられて、横隣は死刑囚で、面会一切できなくて、それに冷暖房もなくて、そしてその後7年間の裁判をやられて、それで7年間の裁判を抱えた後は、4500万円の裁判費用を使って、外務省失職になって、その後は執行猶予4年ついて、身動きが自由にできなかったと。その範囲での報復しかしないですからね。
それ以上のことするっていってないですから。ですからやられた範囲でしか宇山さんにやらないから全然心配しなくていいんですよ。もう全然怖くないんですよ。それから、スターリンはですね、「ロシア人は善良で優しい」とこう言ったんですよ。「ただしその優しさは、動物と子どもにしか発揮されない」と。私もその精神で猫は大切にしますけども、今度みたいな大人同士の問題なら別の話ですね。
【写真 粟野夏美】
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