先日ロシアの軍隊がクリミア自治共和国に侵攻して米国との対立を深めている中で、ロシア政府系英語放送のロシア・トゥデイは、首都キエフで反体制派のデモ集団に実弾を発砲していたスナイパーが元政府側にも発砲していたと報じました。
これは、同テレビ局によればEUの外相アシュトン氏とエストニアの外務大臣の電話内容が「リーク」された結果うかんできた疑惑であるといい、Russia Todayは放送の中で、リークされたという通話内容を伝えました。そのテープの中には「反政府側を攻撃したのと同一人物のスナイパーが警官に向けても発砲している様に見える」とあります。
これは、もし本当なら「前政権側が非人道的に弾圧していたデモ隊の犠牲はアメリカやEU諸国の介入を促すために仕組まれたやらせだったのだ」ということになります。すると現在、電撃戦的に部隊を動員してクリミア自治共和国の実効支配を行なったことで米国から批難されているロシア側の介入を正当化する、というかそもそも米国側が先に何か仕掛けたのだろうという結論に結びつきます。
(ロシア・トゥデイの放送はこちらをクリックしてください。米国のCNNを模したようなセッティングです)
このような神経戦はソチ・オリンピックのころから続いています。ロシア政府は先月米国の国務次官補と駐ウクライナ大使の通話で「EUは糞くらえ」と発言したとされる録音テープをYouTubeにアップしています。それをTwitterで拡散していた、という批難が米国からは返されています。
真偽のほどがいずれも分かりかねる話ですが、米国が昨年のスノーデン事件で信頼を世界的に損なった後だけにアメリカに対しては効果的な打撃です。なおロシア・トゥデイはロシア政府の出資を受けているテレビ局で、その報道の信頼性に疑問をもたれていますが、3月3日の放送でキャスターが「ロシアは間違っている」と異例の政府批判をしたことで、話題をよんでいます。
それで「ロシアにもちゃんとしたジャーナリズムの土壌があるんだ」というコメントもありましたが、「どこの国の報道も間違っている」というキャスターの微妙なのに断言調な言い回しから、ロシア・トゥデイの放送の信頼性を担保するために見せる巧いやり口ではないかという見方も可能です。
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