またラインの作成をめぐっては先行類似ソフトのカカオトークとワッツアップをモデルにしたというコメントがある。つまりNHNの共同設立者である李氏が、もう一人の共同設立者(2007年までネイバーに在籍)であるキム氏が2010年に作って韓国内で展開していたアプリに極めて似たものを2011年に日本法人からリリースさせて「和製アプリ」と銘打って出したことになる。
その後にキム氏はカカオトークのカカオ社と韓国ポータルサイト2位のDAUMを合併させるなどして、現在この2人の経営する会社のサービス内容はまるで合わせ鏡のようになっている(なおカカオトークとLINEの違いを強調する記事もあるが、筆者などには読めば読むほどかえって違いのなさが際立つ内容である。)。
更に言うとカカオトークとLINEは彗星のようなデビューの速度もよく似ている。実はキムボムス氏は2007年にNAVERを辞めた後「家族と過ごしていた」とされるが、そのあと急に2010年3月にカカオトークをカカオ社からリリースした。
この間、どのような経緯だったのかはブラックボックスだ。今年の7月1日から中国でカカオトークとLINEが全く同時期に通信を遮断されたところまで、両者は本当に双子のようである。
ただし、対照的な面も存在する。李海珍氏は1999年にNHNを創立した後、自ら公の場に姿を現したのはわずか2回しかない奇妙な人物で「引きこもり経営者」と言われているというのが中央日報の報道にはある(注3***)。
一方で、現カカオ社のキムボムス氏は人目を引く面があり、共同経営者時代には表の顔役として名前を出していた人物だ。現・日本LINE社ページからアクセスできる2005年のプレスリリースを見ても、キムボムス氏の名前がCEOとして挙げられている。
なおメディアのインタビューも積極的に引き受けて自分の人柄をさらすことに抵抗がないが、(日本漫画原作のパク・チャヌク監督作品映画「オールド・ボーイ」のファンだという。これは2人の男の因縁と記憶、復讐をめぐる話である。)2013年8月、韓国の報道でもう少し剣呑な話題が持ち上がった。
アメリカFBIがキムボムス氏らの身柄を拘束、捜査していたというのだ。「個人情報の不正入手」というそのままの容疑で、このときはカカオ社の幹部とともに3人で2012年にアメリカのJFK国際空港へ到着したところをすぐに身柄拘束された。(実質的に札付きの人物としてマークされていたと思える。なお2012年以来、日本法人のカカオ・ジャパン社に50%の出資をしているヤフージャパンへ質問したが「初耳だ」「これ以上の質問には答えられない」などという返答を広報部から得た。投資家やユーザなどへの告知は皆無のようである。)
いずれにせよLINEとカカオに共通するのは、(1)アプリが中国で完全に遮断された(2)企業トップが、諜報機関のシステム開発歴を有していたりFBI(米国の防諜機関)により身柄を拘束される等、諜報機関との縁が深い点である。
日本では、カカオトークは後発のため出遅れており、孫正義氏のヤフージャパン社との提携でLINEのシェアを奪おうと息巻いているというのが公式見解だが、筆者にはどちらの陣営も、本当は起源も内容も同じものが名称を変えているだけのように見える。ただ、形式的にでも「競争」しているとなると、独占禁止法の規制を回避しやすい(ただし談合で引っかかるおそれはある)等のメリットはどこの国でもあるかもしれない。
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*最初はNAVER社として設立。いちどNHNになり、現在はNAVERにまた名称変更。日本法人LINEの100%親会社である。
**この点について、いくつかの東洋経済など日本のメディア報道では、開発やアイデアが日本人であったという趣旨の記事もある。しかし、筆者は韓国メディア・中央日報記事の方が信憑性が高いと考えている。理由は3点で、(1)まずNAVERの共同創業者であるキムボムス氏のカカオが韓国版で最初にリリースしたカカオトークとLINEの機能・インターフェースが酷似していることと(2)NAVER創業者李海珍氏の、韓国情報機関でのシステム開発や、キムボムス氏の逮捕に付いて報道しない等、日本語メディアの報道の誠実性ないし能力に疑問があること(3)日本のメディアはLINEの広報・またはスポンサーを通じてか不明だが、「和製アプリ」という(韓国由来であることをわざわざ打ち消したいような)不自然な形容がLINEについてのみ多用していることである。
***ただ写真を探すなどするともう少し沢山見つかるので、大規模な会見などを開いたのが2回しかない程度の意味を派手に言ったのだと思われる。
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