政府が1984年に密かに行っていた原発事故と災害リスクに関する研究を本紙が分析したところ、「原発の立地には過疎地を優先的に選定」していることなどが分かりました。
これによると、原子炉一基の格納容器がミサイルなどで破壊された場合の予想死亡者数を計算。我が国の一般的な原子炉立地自治体の人口を前提とするところ「18000人」程度が最大と試算されています。
なお、この研究レポートは外務省の委託研究ですが、反原発運動に繋がる恐れがあることなどを理由に、公表を差し控えるべきであると当時の外務省国際連合局軍縮課長は述べています。
しかし今改めて、これまでの原子力政策の正当性と合理性に対する、再考慮の必要性が問題になってくると思われます。
「過疎地を優先的に選定している実態」と、「過酷事故の場合の死亡数が18000人」、という数字を目のあたりにしても、立地自治体の人々はやはり再稼働を願うのでしょうか。また知事や市長などは、選挙民である住民の健康を守ることが、その最大の責務ではないでしょうか。
この文書を目の当たりにした上でなおかつ、再稼働で得られる経済的な利益との比較は、多数の人間の生命が危険にさらされていることの裏返しであることを認識して判断する必要があります。なお、このレポートは軍事攻撃やテロの際の放射能流出を問題にしていますが、福島やチェルノブイリのような原子炉事故の場合も、放射性物質の流出量とタイミングで、付近住民の急性死亡リスクは依然として存在します。
現在行なわれている東京都知事選挙のような自治体選挙において、原子力政策は争点とするべきかどうかについては、見解の相違があります。細川護煕氏・小泉純一郎氏のように重要な問題点と考えを出す方がいる反面、安倍晋三首相や舛添要一氏の様に、「国政レベルの問題」いう切り口もあります。いずれが正しいかについて、絶対的な回答が出来る訳ではありません。
しかしながら、どこにどういった種類の発電所を置いて、誰がリスクを負った状況で、電力の供給を受けるのかどうかについても議論するべき(とりわけ、都内の水道水すら福島事故で汚染されたような経験の後においては)というのが、住民を守るべき自治体のトップが問題とするべき点だというのが本紙の考えです。
とくに、政治家、とりわけ東京都知事となれば完全な「エリート」であり「リーダー」です。そのような人物には、高度のモラルが求められて然るべきだとも考えています。とりわけ、福島事故の後で人々のよって立つべきモラルの基盤がもろくなっている今では、ますますそうではないでしょうか。
なおこのシミュレーションは、「原子炉1基の格納容器のみ」が破壊されたケースです。原子炉容器や、さらに複数の原子炉、燃料プールまで破壊された場合はより多くの死者が出ます。朝日新聞さんの記事など、他の資料と会わせて読めば判明する点なので、もう明記しておきます。(11月22日、13時ころ追記)
*レポート原文のキャプチャは、ページ下部画像の通りです。この研究は完全な軍事研究であり、全文の公表には安全保障上の問題が大きいため、一部を抜粋してあります。
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(編集長 江藤貴紀)
追記 被害内容の概略についてはリンク先の朝日新聞さんが第一報ですが、過疎地に対する優先的な立地の問題やその他の仮定の置き方の細部は、触れられていなかったため、改めて本紙としても記事化させていただきました。
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