同じ疑問は創設者の西村博之氏についてもつきまとう。果たしてセントラル・アーカンソー大学に留学中(卒業は2000年で心理学専攻とある)の彼はどうやって、留学中の1999年5月に巨大掲示板2ちゃんねる創設の(1)サーバ費用を捻出して(2)多くのスタッフを要すると思われる運営が出来たのか。
ただこの点については今までの調査で明らかになっている部分がある。すなわちホットリンク社(現在、2ちゃんねると商用利用独占契約をしている)の成瀬取締役への弊社インタビューと、同社の協力企業日立システムズのウェブサイトによればほぼ開設当初の2000年からガーラ社が2ちゃんねるのデータを利用したサービスを開始しているのだ。
この点につき、2ちゃんねる側にガーラ社から金銭の支払があったのかどうか、筆者は再三ガーラの広報であるMINAKAMI YOKO氏(漢字不詳)に尋ねたが、明確なお返事がなぜか全くいただけていない。しかしながら営利企業がサービスとして提供する以上は、対価の支払がなされていたと考えるのが常識的である。つまり、2ちゃんねるの維持費はほぼ開設(1999年5月30日)の当初近くから少なくともガーラ社がスポンサーの一つとして捻出されていたことになる。
開設当時の費用の額については未だ不明だが、やはり相当な資金が必要であったと推認され、20そこそこの大学生だった西村博之氏が個人で賄えたとは思えない。
ではどこにジム・ワトキンス氏と西村博之氏の背後があったのかというと、「政府」と思われる。ネットコミュニティは現実政治にも影響を持つため、その情報を掌握するメリットは極めて大きい。良い例が、Twitterが大きく活用されたと言われるアラブの春である。また今年の3月、トルコ政府はツイッター上で流れた閣僚のスキャンダルなどの波及を恐れて自国からのツイッターへのアクセスを遮断せざるを得なかった。
ウクライナ情勢を巡っても、アメリカの国務省で重要なポストにある外交官2名がEUを「FUCK」と言った電話内容が何者かによって盗聴され、さらにYouTubeにアップされている。それをロシア政府がツイッターで拡散して広めて、アメリカ政府の国務省は異例にも不快感を表明した。
スパイの世界では要人の弱みを握るなどして情報を引き出すために「ハニートラップ」という方法があるとされるが、特にアダルト系の性格があるサイトの管理者権限をもてば同様に性的な弱みを握ることが出来る。実際に米国の通信傍受機関NSAは、イギリス政府のGCHQと協力して、イスラム過激派リーダー(性道徳を強調することが多い)の信用を貶めるために、ポルノの映像が流れることの多いYahoo!チャットの画像サービスを監視していたという。
(イギリス紙ガーディアンに掲載された、エドワード・スノーデン氏のリークした文書の掲載された記事より)
ジムワトキンス氏は2000年に、まさしくアダルト分野の掲示板である「ぴんくちゃんねる」を2ちゃんねるの姉妹サイトとして、運営を開始した。(仮にだが「ぴんくちゃんねる」の書き込み履歴などを個人情報と共に流された場合、ユーザーらはハニートラップにかかったのにも匹敵する大きな打撃を受けるだろう)
また日本でも政治家の2ちゃんねる利用は早くから開始されている。匿名のネットユーザーらからは、加藤紘一氏が自民党の実権を握ろうとして行なった2000年11月の「加藤の乱」前後に彼が積極的に2ちゃんねるに登場して、影響力の強化を図ろうとしていたことが指摘されている。また加藤氏は同時期にひろゆき氏とともにイベントに出席していることも指摘された。
なお、現在2ちゃんねるの書き込みについて炎上防止サービスを提供するホットリンク社の「ネット風評被害バスターズ」は、もともと電通PRがガーラ社の事業を受け継いだ企業・ガーラバズ社等とともに運営していた。電通というと今では単なる広告代理店の印象が強い。しかし実は第二次世界大戦中には共同通信・時事通信と合併して「同盟通信社」という、軍と外務省から強い支援を受けた、国策推進のための報道機関であった歴史を持つ。
いまではあまり知られていないが「同盟通信社」は当時のイギリスのロイター通信およびアメリカのAP通信と並んで、人員からも取材力、情報伝達力からも世界三大通信社だった。(終戦後はその影響力を殺ぐ目的で占領軍GHQにより解体されて、いまの共同通信・時事通信・電通の三社に分かれている。)
一般論であるが、時間の経過や組織改変を経ても、団体はその性格を維持することが多い。また政府与党自民党がホットリンク社を通じて間接的に2ちゃんねるのスポンサーであったことも匿名のネットユーザーらの調べで明らかになっている。インターネットが世論に与える影響力の強大さや、組織の沿革を考えるならば、電通または政府などが一種の国策として2ちゃんねるの開設当初(または有用性に気づいた極めて早い時期)から運営に携わっていたとしても、あまり不思議はない。
ちなみに冷戦中、表面的には非営利で独立した、募金等を資金源とするとされていた大手のラジオ局ラジオ・フリー・ヨーロッパが実際にはアメリカCIAが出資して運営した報道機関であることが判明してスキャンダルになった。2ちゃんねるととてもよく似ているのは、スポンサーのない独立した中立なメディアをことさらに標榜していた点だ。そして2ちゃんねるでひろゆき氏が、ことさらにスポンサー関係を隠そうとしていたのには、何かそれを隠したい理由があったようにおもわれる。
*ウィキペディアが引くアエラの過去記事によれば、ジム氏は米軍在職中もサイバー関係の職務についていたとあるが、そうするとサイバー戦部隊の可能性もある(ただし実物は未確認)。なお、本人のSNSページではその情報は伏せられている。
**ジム氏の言い分としては、前々から余っていたサーバがあったのでそれを増強用に当てたということであった。ただ、たまたま運良くそう資源があいているのか、またその性能その他が現在の実用に堪えるものかどうかなどやはり疑問がある。(確認中)
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