東京電力福島第1原子力発電所事故の経緯について、政府事故調が行ったヒアリング調書のうち、清水正考・東京電力社長(2011年3月11日時点)の調書へかけられていた情報公開請求へ、政府が開示しない決定を12月25日に下した。
同事故を巡っては故・吉田福島第一原子力発電所所長の調書や菅直人総理など当時の政権首脳はすでに政府のHPで開示済みである。
一方、12月26日の報道によれば東電幹部の調書は同意が得られないため、「年内の公表」は見送ることになったとされていたも。だが、東電の経営陣に関する調書への情報公開請求に対して今回、下した全面不開示決定は、来年以降も開示はしないという意味である。
ここで、政府の対応には甚だ疑問があり、吉田所長については本人が開示しないことを望む上申書を出していたことも背景として「任意の協力」であることを理由に、不開示決定とするという決定を本紙に対して下しておきながら、そのあとで結局は「任意の協力」だったにも関わらずHPで公表している。
なのになぜ、清水正孝調書についても同様に本人の「任意の協力」であることを理由に不開示にしたのか、まったく平仄が取れていない。吉田調書を開示して良いなら、清水調書も開示して良いはずである(あるいは死者と生存者で、個人情報の保護について異なる保護をする立ち位置をとったのだろうか。しかしながら今回の不開示決定通知書では、吉田調書を現在政府が開示していることとの整合性について、かかる部分についての理由付記は見られない)。
さらに素朴に、清水社長(当時)などは自社の起こした事故の真相解明について、何のモラルをもっているのか甚だ疑問に思われる。自己責任の重さと今後の原子力政策へ調書が有する価値に鑑みれば、素直に調書の開示に同意をするのが筋ではないだろうか?現在も清水氏は東京電力の顧問をつとめており、一体いかなる理由で開示への同意をまだしていないのか、同社へ年開けにも取材を行う予定である。
なお政府の情報公開請求に対する不開示決定については、行政不服審査法に基づく不服審査申立および、行政訴訟で処分の効力を争って不開示決定処分の取り消しないし開示の義務づけを求める方法があり得る*。
*吉田調書については、筆者の請求に対して不開示とする決定が出てそれに対して筆者が行政不服審査申立書を提出したあとで、政府が吉田調書の一部を公開するというとても混乱した対応が見られた。そして現在も、公開する範囲を巡って弊社と内閣府の間で調整中である。普段は開示請求の範囲についての縮減にかかる行政指導は絶対に突っぱねるところ、わりと弊社としてはフレンドリーな対応である)。
関連記事リンク1 アメリカ政府 福島事故時の日本政府担当者・氏名と所属と携帯メールアドレスなどを情報公開
関連記事リンク2 福島事故・政府事故調の調書作成に大量の「ゴーストライター」が存在 氏名とともに判明
関連記事リンク3 「日本政府にない福島第1事故の議事録、米国が保有」 アメリカ連邦情報公開法で開示
関連記事リンク4 福島事故・政府事故調の「吉田調書」アメリカ政府には共有されず 米連邦情報公開法で判明
【編集長 江藤貴紀】
まだデータがありません。