ここに引用した、秘密警察による監視や言論の弾圧が経済の失敗を招くという指摘は実はむかしからありました。
たとえば冷戦で東側陣営が破れた原因の一つとしては、東西の経済格差が上げられることがあります。共産主義政府による、過度の監視体制が招いたイノベーションの停滞がもしその原因だとすると、アメリカはまさしくかつてソ連側の犯した失敗を今おこなっていることになるでしょう。
もちろん、イノベーションの停滞と監視社会の関係だとかいうのは実証的な話ではないかもしれません。マイクロソフトやアップルの株価の高下は、必ずしもきれいにこれらの企業がアメリカ政府の個人情報監視プログラムに協力をはじめた時期と一致している訳でもないです。だけど会社でもそうじゃない組織でも雰囲気はその中にいる人たちのやる気に影響を与えるし、やる気のない人がいい仕事をすることはめったにないです。これは世の中の多くの人が認めてくれる経験則ではないでしょうか?
それに必ずしも実証主義的じゃなくてもたくさんのヒントを与えてくれるアイデアや学説というのはあるとおもいます。たとえば、有名な社会学者のマックス・ウェーバーは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を書きました。宗教の哲学が個人の思考に与える影響と、その結果としての経済上のメリットについてやや乱暴かもしれない議論をしています。それに、戦後日本の経済発展の理由として、儒教の教えによる教育熱心な風土が言われたりしました(例えば、フランシス・フクヤマの「信なくば立たず」)。
付録 スノーデン氏声明の英語全文を、次ページに掲載しました。彼はハッカーとして有能だっただけでなく、文章も相当巧いと思います。興味のある人はぜひ読んでください。
最後に、この声明文にはYahoo!のTwitterまとめに出ていた小林恭子氏のtweetからたどり着いています。小林氏のつぶやきに感謝いたします。
【10月11日追記:訳の一部を書き換えて本文の中に、最後の2パラグラフを挿入しました】
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