LINEの社員が、自社の運営するNAVERまとめで、社員の身分を明示せずに、LINE社とライバル関係にある無料アプリCOMMやブログサービスFC2を叩く記事を作成していたことが分かった。このLINE社員は鳴海淳義(ナルミ・アツヨシ)氏で、早稲田大学を卒業後、ネットメディアのCNET記者を経てNHN(LINEの前身)時代の2012年1月からラインに勤務している。また、NAVERまとめでは、作者は不明ながらやはりFC2ブログがグーグル検索にヒットしにくいだとか、スパム認定を受けたという噂を紹介した記事や、通話アプリLINEのライバルであるViber(楽天が日本では展開)をマルウェアのように扱う記事が発見された。一方で、LINE社の事業へは傾向として甘い記事が目立つ。以下、詳述する。
(鳴海氏がラインの社員と発覚したのは日本人が余り使わない英語SNS linkedin のページがきっかけである。)
彼の作成したNAVERまとめのページでは、ライブドアブログを運営するLINE社とブログ事業で競争関係にあるFC2社について、各種のネガティブな情報があげられている。「まず日本の会社ではない」に始まり、他にも「FC2のラスベガスの住所はダミーかもしれない」「本社がアメリカにあり日本法の適用を受けず、異議申し立ての窓口が無くFC2IDが無ければ運営側に問い合わせることも出来ない」と続く。
さらには「無料通話アプリ「comm」、売り文句の「音声品質がいい」に疑問符」と題してLINEよりもCOMMは音声の質が悪いという内容の記事を作成している。これはいわゆる「ステマ」の典型例である。
*(ただし、Skypeについては音声が良好なことを同じ記事の中で認めているが、Skypeはインスタントメッセンジャーではないため、LINEと直接の競合にはないとも言える)。
もっとも彼はNAVERまとめのページで「自分の所属とは関係なくやっている」と記載している。だが社員なのだから利害関係があることをハッキリさせないとフェアな訳がない。また、誰が書いたのかなどは不明だが、2012年に作成された(作者不詳の)別のNEVERまとめの記事は、この鳴海氏自体を、有名まとめ作者としてプッシュしている。
しかしこの時点ではすでに鳴海氏はNHN(現LINE社)の社員であり、あたかも第三者のようにほめて彼が作ったまとめのPVが大量だとアピールする(つまり、NAVERまとめを作ればあなたも儲かりますよというメッセージである)のは、どう考えてもフェアではない。
以上の情報は、英語SNSやNAVERまとめ、ツイッター、その他の公開情報を照らし合わせて注意深く調べて分かった話である。しかし普通のネットユーザーはそんなヒマもないし、この鳴海氏がLINE社員などとは思わずに、彼の作成したNAVERまとめを読むだろう。
(「『まとめ人の所属を明示しないと適切に判断できない』という人は無視してください。」という言い分が上がっているが、そもそも鳴海氏がLINEの社員かどうかなど見る人のほとんどは分からずにまとめを読むはずである。ステマでフェアじゃないと言われたくなかったら、「NAVERまとめを運営しているLINE社員の鳴海です。またうちの会社はライブドアブログも運営しています。まとめに記事を書いて欲しい人は、ご相談ください」と言うべきだ。)
(LINEの採用ページではNAVERまとめを編集する職種も募集中なので、ちょうど鳴海氏のやっていることと同じ業務内容だ。かつて別の広告媒体でLINE社は、NAVERまとめの作成案件を企業向けに斡旋していたので実質的に広告記事を作成すると言うことである。とするとひょっとして、鳴海氏が書いたセブンイレブンの総菜記事なども広告なのだろうか、と疑念がよぎってしまう)
さらに、先ほどのNAVERまとめや、ツイッターのページを見ると、鳴海氏はメールアドレスを晒して、まとめ作成の案件依頼を受け付けている。これはつまり、LINE社員によるNAVERまとめを使った広告の斡旋にしか筆者にはうけとれない。まとめると、NAVERまとめはその内容に金やLINE社の利害関係が露骨に反映されていて、フェアな情報のプラットフォームではない。
(ツイッターの自己紹介によると、「会社員ブロガー」だそうである。前職がCNETなのは明記していたのに、なぜLINE勤務の現職を書かないのか。)
こういうアンフェアな疑惑の強いサイトが検索上位に出てくることは、ネット情報の信頼性を毀損しているように思える。またNAVERまとめが嫌で、記事のページを開かない人物にも、グーグルの検索結果に概要が上がっている状態なら、その記事内容が一部は目に入ってしまう。そしてNAVERまとめは何故か、グーグル検索に異常に強いので(特殊な契約がグーグルとLINEにあるのかどうかは不明)、鳴海氏のFC2に対する攻撃はずいぶん成果を上げたと思われる。
(「FC2」をキーワードにグーグル検索すると先ほどの鳴海氏のNAVERまとめ記事が、上から4番目に上がってくる。)
そして「今、FC2ブログがヤバイらしい・・・fc2blogが「検索エンジンに載らなくなった」とネットで話題になっているようです」という作成者不明の記事もNAVERにあるが、こちらはもっと露骨なfc2への攻撃である。
ネットでの噂を集めたという体裁だが「FC2がGoogleからスパム認定!?」などの非常にネガティブな情報が続く。なおNAVER社は広告資料で「第三者話法」と呼ぶ、他人の意見的な内容をそれっぽく広告に書くという趣旨のプログラムを斡旋している。ちょうどこういうやり方だと思われる。
次に、通話アプリについてのまとめ記事と検索結果を見ていこう。(!)LINE社の通話アプリ「LINE」について「LINE 危険性」でグーグル検索した場合と、(2)楽天の展開するViber(いわゆるインスタントメッセンジャーで、LINEと競合関係にあるアプリ)を「Viver 危険性」について調べると検索トップはやはりNAVERまとめであった(この2つがLINE社の運営するNAVERまとめがLINE系のアプリを扱った記事の典型例なので、ここではあげておく。他にもカカオトークやワッツアップの記事もあるので、興味のある方はそちらをご覧いただきたい。)。
「要注意!!携帯番号を偏向してのLINEは危険!?」で始まる記事。あまり問題点としては大きくないところから切り出されるんで、ここで読むのを止めてしまう人もいそうである。ただし、それ以降はID乗っ取り問題についてのちゃんとした指摘もあるので、いちおうそこまでアンフェアではないことも留保しておく。
だが、より厳しい指摘がViberにはなされている。「Viberはユーザの意図しないところで、アドレス帳情報を外部送信していると見られても仕方ない状況だと感じる。」とある。まさしくLINEにも当てはまる最大の問題点をずばり言い当てている。端末情報の無断収集と、過度に広いアクセス権限の要求も、この記事には漏らさず指摘してある(リンク先参照)。
結果をいうと、LINEについても不都合なことを全く言っていないわけではないが、もっとクリティカルな個人情報の無断収集と乱用の危険についてはVIBERの記事でだけ述べられており、後者のほうがよほど危険な印象を筆者なら受ける(ただしViberもLINEも、どっちも似たり寄ったりのアプリなのでLINEの危険性について知りたい場合は、Viberの記事の方を読んだらよくわかる)。
誰でも、検索結果で上の方のページの方に目が行くのは当然なので、NAVERまとめはLINEのライバルつぶしをする情報操作の道具になっているのではないか。検索で下の方にしか引っかからないと、その情報の価値はゼロに近づいていく。実際、韓国国内でもLINE親会社のNAVER(検索エンジンとポータルサイトで7割以上のシェア)が、ネット上の情報を自社に有利に誘導してゆがめているという批判が根強く言われている。筆者が見たところ、LINE社が日本のウェブ事業で行おうとしていることも、NAVERまとめとライブドアブログを利用したまとめサイトで、検索結果の上位を独占・寡占させて情報を都合よく操作することに思える。
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