国立国会図書館で、非常勤職員の募集が以下の通り出ていますが、「生け花ができるとなお可」だそうです。業務に生け花をいけることがあるのかどうかは不勉強にして知りませんでしたが、やっておくと就職の役に立つようです。倍率は不明。
牧歌的で、浮世離れ感にいやされる求人内容だと思います。なお、生け花ができない場合は「相談に応じます」とあるので、どんな相談に乗ってくれるのかも気になります。一種のジョーク的な求人記載なのかもしれません。それに「生け花】くらいさしておくのも我が国ならではの文化的な「余裕」の現れと考えることもできます。だけど、真面目に「お茶くみ要員」みたいなのを募集している疑念も強くあります。
まあジョークだとすると、あんまり真面目に批判するのも野暮です。でもこれは職務との関連性が過度に薄そうで、「生け花」の嗜みとか、そんな要件で人材をリクルートしてていいのかというのが率直な感想です。(別に、生け花そのものの価値を否定している訳では全くありません。)組織として健全に機能することを目指すのなら、もうちょっと本来の職務とレレバンス(対応性)のある人材を採用するべきではないでしょうか。
これを問題にするのは、国立国会図書館は、公文書館理法に基づいて行政から保管期間の終わった記録が移管される国立公文書館と並んで、学術研究のための資料保管の二大拠点的なところだからです。そして前者はアメリカでの各種アーカイブと同じ様に、重要な役割を果たします。そして、特に後者においてですがアメリカ国立公文書記録管理局と比して、極めてスタッフが貧弱(Wikipedia情報では60分の1ほど)とされていて、実際に保管されている資料の質と量の両面で圧倒的にアメリカ負けしているという問題点が提起されています。
実際、我が国の重要な歴史的文書でも、アメリカ国立公文書館から発見されたものは枚挙に遑がないですし、日本人研究者にとってそこを訪れるのは、一種のメッカ巡礼のようなものと評されることも多いです。
これはじつは逆を言えば、アメリカ国立公文書館はその秘密指定解除に関する強力な権限などを持って、その意に添った方向で「歴史を語る」ように研究者を動かすという強力な情報発信力を持っている訳です。ある信頼できる匿名の歴史学者から取材したところですが、アメリカ国立公文書館の近辺にはアメリカ諜報機関(を形式的には退職した)スタッフが在住しており、現地に出向いた日本人研究者にコンタクトをとってくる(その方の場合は日本語の堪能な「元NSA職員」が、声をかけてきたそうです)といいます。(有名なエドワード・スノーデンさんのいた組織ですね。)
つまり、それ自体がじつは「どんな情報を出すか」という情報戦の一大拠点といえるわけで、正規職員だけで2500人の大組織です。当初の「生け花」の話は冗談で終わらせることもできます。しかし、一事が万事という言葉がありまして、「どれぐらい真面目に人材採用をしているか」というのは組織のモラルを表すメルクマールです。とすると非常に戦略的に、歴史的文書を取り扱っている他国に比べて、極めて恣意的で気まぐれな運営をしているのが日本の歴史文書管理施設だとすると、総合的な国力の「差」になると思われる訳です。
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【注:この記事は2月27日・午前3時ころ、大幅に加筆修正しています。最初はすごく婉曲的なかき回しだったのですが、当初の記載に対するレスポンスをみると単なる小ネタとしか理解してもらえなかったケースがばかりだったので、書きぶりのまずさを大幅に改めました。】
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