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アメリカNSCの元高官が来日して異例の発言。秘密保護法と核武装に懸念を表明

2014年5月19日01時00分

アメリカNSCの元高官が来日して異例の発言。秘密保護法と核武装に懸念を表明


5月9日、有楽町で核武装戦略を専門とするアメリカの元国務省高官で合衆国国家安全保障会議委員もつとめたモートン・ハルペリン氏が、予想を裏切る内容の講演を行った。この背景にあると思われる日米関係の悪化理由とそのネット世論誘導も含む両国の情報戦について考えたい。


ハルペリン氏の会見はかいつまんで言うと(1)日本の秘密保護法と情報公開制度は近年の民主国家で最悪である。(2)核武装を含む日米同盟の間での協議について自分の知る限りで、秘密保護法が必要であると考えたことはない(3)集団的自衛権の行使が必要かどうかを考える以前に、日本は慎重かつ丹念に透明性を持ってその内容と、それが核武装につながらないということをを近隣諸国と市民社会に説明しなければならないというもので強烈な日本政府批判だった。


これは秘密保護法の作成に当たって政府や有識者らが国会で説明した内容と真っ向から異なる。昨年の秘密保護法成立に当たっては、与党・自民党だけでなく、有識者として国会に招かれた東京大学法学部の憲法講座教授(学部で随一の切れ者として知られる)・長谷部恭男氏らが口を揃えて「米国等の同盟国との秘密共有に必要であるため」という理由付けを述べていた。




(報道陣に配布された資料1:「国家の秘密を知る権利」。単なる情報公開制度の概略で、これを配ることに作為を感じた。)



(資料2:「集団的自衛権について」こちらは露骨に日本の核武装計画に対する強い疑念を表明している(下の2行参照)。)


さて、秘密保護法の制定についてどちらの見解が正しいかはさておき(どちらもロジックとしては成り立っているように見える。)、この発言が問題になるのは以下の2点から、今回の講演が米国政府の主張を代弁している可能性が高いという事情による。


まず、会見場が実質的に米国政府の強い影響下にある可能性が高いと見なされており、ここの講演者の決定は「委員会」のブラックボックスで決められる。すなわち、講演の行なわれたFCCJ(外国特派員協会)はもともと、ジェネラル・マッカーサーのいたGHQ本部の真下にあって占領軍のOSS(今のCIAの前身)が報道統制と、自らが作らせた憲法で禁止する検閲や郵便の開封を大規模に実施する根拠地としていた歴史を持つ。組織や制度において昔からそうであったことはだいたい今もたいして変わらない。


なお大手メディアの中で最も安倍政権支持を熱烈に行なっていると思われる論調の産経新聞のウェブサイトに、この会見のちょうど5日あと掲載された保守系雑誌「正論」記事がまさしくその旨の批判を行なっているので是非ご覧いただきたい。(日本政府内部の保守派が米国に持つ不快感を代弁しているような内容であるが、タイミング的にはちょうどこのハルペリン講演への抗議声明とも取れる。)FCCJは筆者の理解でも、ゲストスピーカーの選定過程自体が、(表向きはブラックボックスだが)かなり米国政府の意向に沿っている傾向がある。ただ、それでもまだ、日本政府と国内大手メディアの発表に対するオルタナティブな見解発表と報道の窓口が開かれているだけましというのが現段階の考えだ。


また、ハルペリン氏は退官しているものの、日本の外務省OBがそうであるように、古巣の国務省の立場を(遠回しに)代弁しに来た蓋然性が高い。これは、日本の官僚の天下りの場合と近いと考えて頂ければ分かりやすい。たとえば、外務省OBは日本国際問題研究所その他のシンクタンクに籍を置いて、実質上外務省の「裏仕事」を行なうし、財務省OBは国会議員となってもやはり財務省の立場に非常に近いスタンスを取る。(前者の例として原子炉爆撃に関する同研究所の外務省委託レポート参照


 

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