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「原発 炉心崩壊後は内部は調査が不可能」 1984年,報告書:安倍政権 立地自治体へ配布拒否

2014年11月2日00時25分

「原発 炉心崩壊後は内部は調査が不可能」 1984年,報告書:安倍政権 立地自治体へ配布拒否





誰にとっても、頭の中では目に見えていた発表が先日、新聞各紙の一面を飾った。「福島第一原発の廃炉作業で、東京電力は30日、1号機の核燃料取り出し時期を見直す方針を公表した。使用済み燃料は2年遅れて2019年度開始、溶け落ちた燃料の取り出しは5年遅れの25年度開始」(10/31日付け朝日新聞)のだ。


日本政府もこれまで、燃料棒の取り出しが困難であることは確かに認めてきた。しかし、「原子炉破壊後に、内部の調査が不可能」であることが30年前の政府秘密文書「原子炉施設に対する攻撃の影響に対する一考察」の時点で指摘されていたことは、今まで公表されてこなかった。つまり今日まで誤った前提の元で30年前から原子力政策が続いてきたことになる。もちろん原発再稼働についての世論調査の中身も、これまでずっと誤った前提に基づいた意見の反映でしかない。


この「黒い歴史」は当時の中曽根内閣から始まり、福島事故後の民主党政権、そして現在、原子力発電所の再稼働を進めようとする安倍政権まで変わっていない。


にわかには信じられないことに、原発の立地自治体にも政府はこの文書を共有していない。じつは今年の上旬、ある原発立地自治体から、(この文書の一部を報道した弊社に)「原子炉施設に対する攻撃の影響に対する一考察」を貸し出してくれないかという問い合わせが、あったのだ。


依然として事情は同じだ。10月15日、柏崎刈羽原子力発電所の立地する新潟県の泉田裕彦知事に、外国特派員協会の会見で直接確認したところ、中央自民党政権は新潟県へこの文書を提供していない。泉田氏は(ヘタに原発の危険性を示す文書を出してしまうことによって)「寝た子を起こさないようにしているのだろう」という。


なお、筆者はこの文書を裁判で入手して、2011年9月から保有している。かつて、2012年に私が外国特派員協会でスピーチしたときにも、あえて近藤俊介氏の作成したとされるシナリオがもっとも機密性の高い文書であるかのように「みせかけて」語り、よりこの文書がはるかに危険なことは申し上げなかった。


そういう意味では、私も政府と同罪と言えるだろう。しかし軍事研究というセンシティブな性格とのバランスから3年以上まよいつつ、これまでこの箇所の公表を控えていた。ひょっとすると「国家の安全保障に関する情報を無責任に公表した国賊」のような誹りを受けることを怖がっていたのかもしれない。


そのことを、1国民、あるいは1人の人間としてお詫びしたい。しかし、もしこのまま原子力発電所の再稼働が行われれば、文書の他の部分についても、さらに公開の必要が生じてくると考える。


原子力発電所が軍事攻撃、その他の有事の際に持つ脆弱性とその際の危険性は極めて明らかである。そして1984年文書は「被害状況の調査さえ不可能」と、お茶を濁すことなく断言している。福島の現状はその裏付けをするものであり、調査が不可能ならば、その結果として生じる経済的な損害の調査予測も言うまでもなく、不可能に近づく(もっとも仮に技術の進歩によって内部の十分な調査が可能になるかもしれない。しかしそれでも、原子力発電所の稼働に不都合な情報を恣意的に共有せず、逆に都合のよい情報のほうのみを政権が出していたという恣意的な政策を行っていたという問題点は依然として残る)。


安倍政権が本当に抱えるアキレス腱は閣僚の政治資金問題だけではない。もしも、本当に原子力発電所の再稼働にこだわるならば、史上最悪の宰相は、間違いなく安倍晋三氏だったと歴史が評価するだろう。


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【江藤貴紀】


 

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