Menu
エコーニュースR(2015年5月〜)はこちら

アメリカ諜報機関のトップシークレット・NSA誕生史「パズル・パレス」

2013年12月20日06時55分

アメリカ諜報機関のトップシークレット・NSA誕生史「パズル・パレス」

1 音楽的なリズムのある美文で、ほとんどを公開文献と情報公開請求で得た資料によって構成した、NSA研究の先駆的な本です。文体は村上春樹さんの初期作品や、柴田元幸さんの翻訳で有名なポール・オースターに近いです。


2 内容は、アメリカにおける通信傍受・暗号解読の開始から、NSAまでを描いています。

 たとえば、2章・「前奏曲」ではアメリカの通信傍受機関の父、ハーバート・オズボーン・ヤードリーの自伝と、アメリカ軍の公開資料・「米軍秘密部局編・歴史的背景」を元に、その誕生と活動を描きます。(後者は英語で、”U.S. Army Security Agency, Historical Background, Vol. Ⅲ”)


3 出典のノートが完璧になっているので、「再構築」が可能です。そのため検証可能性からも、方法論を学ぶにも、ジャーナリズムに限定されない、研究書でもあります。逆に日本の報道作品は出典がほとんど皆無な作品が多く、諜報機関関係の場合「怪文書」になってます。


4 いま取り上げるのは当然、NSAによる大量盗聴問題が背景にあります。その観点から次の2つが興味深いです。

 (1)アメリカにおける、通信の自由を保障する法律、電気通信事業法は、第一次大戦をはさんで1919年にまた効力を取り戻しました。しかし、同年に国内最大手の通信会社「ウエスタン・ユニオン」と政府の間で、通信情報を政府に提供する連絡官を置くという取り決めがなされます。(当時これは完璧に違法でした。)さらに、翌年には同じく大手通信会社のポスタル・テレグラフとのあいだでも同様の取り決めがなされます。


 (2)また、アメリカにおける暗号解読の最初の大成功は、1921年に締結されたワシントン条約」における海軍の軍縮比率の交渉における日本国外交団の公電の傍受でした。そこで、10:6までの割合ならば日本が譲歩する準備があることを早期の段階で察知しました。あとは、時間をかけて日本側が譲歩を待つだけであったと米国側は伝えています。


 (3)以上を総合すると、①当初から通信の秘密は法律上アメリカで保障されていても空文となっていたことと、②政府と通信会社の非合法な活動に関するつながりの存在③約100年前から、通信の傍受と暗号解読で日本は随分してやられたということが言えます。


5 このあとにも長い歴史が続きますが、いずれも、スノーデン事件のあとから振り返ると今行なわれているまさにそのことが、かつてから続いていたということがわかります。人がやることは、そうそう変わらないものです。いまのアメリカを、そして日本や世界の今後と今をみるためのフレームとして、もう一度読んでいい本だと考えられます。


6 ただし、英語版と日本語版で内容が異なります。(日本語訳だと、重要な部分の内容がはしょられている。とくに大事なのが「出典」です)。なので、興味のある方は英語版(Amazonリンク)をお勧めします。


 

参考の一冊
 
人気記事ランキング
 

    まだデータがありません。

ページトップへ戻る