警察官僚を経て政界入りし、建設大臣などの閣僚を4度歴任した元国民新党代表の亀井静香代議士が、自己の政治資金管理団体から1903万円の使途が全く不明な資金を平成22年から平成25年に自分で受け取っていたことが分かった。また平成25年には高級フランス料理店「レストランひらまつ」で268万円を新年会の集まりとして計上しておきながら、参加者からの対価を受け取った記載が政治資金収支報告書になかった(注)。
(亀井静香氏の団体から亀井静香氏に払われて亀井静香氏が853万円の領収書を切った平成25年の政治資金収支報告書)
亀井議員の政治資金管理団体、「亀井静香後援会」の平成22年〜25年分の政治資金収支報告書の記載によると、組織活動の、単に「活動費」としてだけの使途で亀井氏に対して、それぞれ369万円、269万5000円、362万円、853万円が支出されているが、それ以上には何も書いていない。従って実際の使途を実質上、明らかにすることなく亀井氏は資金を政治資金管理団体から入手したことになる。
(「活動費」で支出先が「亀井静香」としか書いていない369万円分の政治資金収支報告書)
これでは、名目上は何であれフリーハンドの資金を政治家個人にあげたのと等しく、政治資金規正法で禁じる寄付制限の禁止(同法26条1号と3号)で、亀井氏本人と亀井静香後援会の構成員が刑事罰に問われる得るし虚偽記載をしたものが刑事罰に問われる(同法25条1項)余地もある(それぞれの法定刑は、1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金と、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金)。(政治資金管理団体からその代表する政治家個人が資金を受け取り問題となった例として、江渡防衛省が350万円を自己宛寄付で政治資金収支報告書に記載していた事例があり、もう一ヶ月以上審議の中で論争が続いている。)
こういうことがどうして問題なのかというと、いったん政治家個人の手元に渡った資金の使途は、政治資金規正法で開示の義務がないため、第三者からは全くブラックボックスになり、何のために使っているかも不明になるからである。従い、政治資金の流れを国民の監視と批判の下に置くという政治資金規正法の趣旨に完全に反して、実質的に亀井氏のポケットマネーとなっている。
なお、ウィキリークス暴露のアメリカ大使館公電で明らかになったところによれば、政治家の金銭面その他でのスキャンダルがないかどうかの「身体検査」を警察庁は行っている。警察官僚だった亀井氏はもともと資金の流れなどをチェックする立場だったことになるが、その本人がとてもずさんな政治資金処理をしてしまうというのは皮肉である。
昔と規制が大幅に変わったためそれに対応できなくなったのか、あるいは失礼ながら、年齢的にも能力が全盛期程は発揮できなくなっていたのかもしれない。
(大手レストラン経営「ひらまつ」への新年会費支払)
現在、国会では主に自民党閣僚の政治資金を巡って辞任するべきか否かの論争が続いていて、小渕氏、松島氏の辞任に繋がった。その中で政治資金の話はもうやめにしようという趣旨の発言を安倍総理がしたともされ、その細部について朝日新聞と産経新聞が意見を衝突させている最中でもある。
しかし私見では倫理、能力、その他のあらゆる事情を加味して「公職にふさわしくない」と判断される人間は誰であろうとも速やかに身を引くのが公職者としての責任である(他のメディアの事情は知らないが、少なくとも弊社は安倍降ろしだとか自民党を攻撃する意図で報道をしているわけではない。あくまで「是々非々」で分け隔てなくフェアに報道は扱うべきであるというスタンスで、今回の亀井代議士記事も報道している)。
これまでの国政に対する貢献と年齢、また今回のようなミスを考えれば、亀井氏は身を引くのも勇気ある決断である。
それを契機に与党・閣僚らの首までも取れるなら「ドン亀」の異称をとり強面でならしていた亀井静香の、「差違え」として不足はなく、花道を飾る武者働きになるのではないか。
(本筋ではないが、大学生時代に雀をパチンコで撃ち落として焼き鳥にしたとか、高校に腹を立てて中退してから東大に入ったなどエピソードが多くて、記事とは関係ないが個人的にはとても亀井氏は好きな(面もある)キャラクターである)。
(注:平成25年分の政治資金収支報告書が平成26年11月28日から入手可能になったので同29日更新)
参考 平成22年 亀井静香後援会 政治資金収支報告書リンクの魚拓
関連記事リンク 竹下亘復興相 政治資金で金券175万購入、一部はタイムスリップして過去の政治パーティに使用 酒は「備品消耗品」名目: 疑惑の総額、501万円に
関連記事リンク 自民党 松村議員 自分の政治資金管理団体から800万円を自分にトンネル融資:無利息で借入れ、返済なし
関連記事リンク 鳩山邦夫元法相 ワイフのエミリー氏と息子・太郎氏の「鳩山企画」社へ1578万 政治資金収支報告書から判明
関連記事リンク 舛添要一都知事 政治資金で自宅に絵画、美術品の類896万円購入 事務所家賃も自宅に1516万円 計2412万円の不適切な計上
関連記事リンク ウィキリークス流出 アメリカ大使館機密公電で判明 「閣僚選任の『身体検査』は警察庁が担当」 河野太郎氏が米国へ情報提供
【編集長 江藤貴紀】
まだデータがありません。