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佐藤優氏 「陸自の『別班』がバレなかった背景 海外で二重スパイと化していた危険」

2013年12月5日00時52分

佐藤優氏 「陸自の『別班』がバレなかった背景 海外で二重スパイと化していた危険」

11月27日、共同通信社のスクープで陸上自衛隊に総理・防衛大臣・防衛省のどこも知らない別動部隊が存在することが明らかになった。その名は「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)で、存在も秘匿されたまま、自衛官の身分を完全に外して、海外で冷戦時代から活動していたという。後述の通り東京では、あまり大きなニュースになっておらず、インターネットの匿名掲示板でも意外なほどに盛り上がっていない(12月4日時点で、2chのスレッドで一番伸びているのが180レスだけ)。


ただ素人の目には、秘密活動の分野には非公然な部分が必要だという気もする。ところが予想に反して、自他ともに認めるスパイ・インテリジェンス方面のプロフェッショナル佐藤優氏は今回の事例が極めて問題だと述べた。ではスパイがこっそりやるのは何がどうだめなのか?(この記事は、11月28日に佐藤優氏をゲストとして開かれた新党大地さんの、公開の勉強会を取材してきたものです。)


佐藤優氏「これは、共同通信の配信で、東京では余り広がらないが地方ではちゃんと出ている。東京でもちゃんと拡散させるべきだと思うのですが、記事によると共同通信の2008年から5年間かけた取材です。だから、これは相当の調査資料ですが、とんでもない、深刻な話です。


別班のような組織が自衛隊にあるというのは、外務省にいるとき聞いたことがあります。これは自衛隊だけではなくて、警察、 内調(内閣情報調査室)も類似の活動をしています。内調の関係者で、観光客に紛れてソ連に潜入して、パクられて、裁判にかけられた馬鹿なヤツいます。こんな・・・少年探偵団みたいなのが、ロシアにつかまったらロクなことないんです。


そもそもこれは、まったく意味がなくて、日本のインテリジェンスの恥です。どうしてかって言うと、インテリジェンスっていうのは、情報っていうのは、公務員がとった情報、自衛官がとった情報っていうのは、国民のものなんです。それは日本の国益と、国民の利益のために使われないといけない。それを判断するのは政治です。


どういう情報が必要で、その情報をあげてどう判断するかが政治ですが、この様な情報は総理大臣や、外務大臣や防衛大臣に上がらないんです。どうしてかって言うと、出所が不明でしょう。総理大臣に上げる情報というのは、どの程度の確度があってどこから出てきたのか・・・具体的な情報源がなくても、クリアランスを経た情報しか上げられない訳です。


聞き込みのままの情報では、単に防衛省のファイルに、情報を積んだ陸幕長の気休めのための情報にしか過ぎない訳です。こういったことによって、国益が事実上侵害されている訳ですね。日本政府として大使館も知らないんだから、中国やロシアでも、こういうことをやっていたら外交問題になります。無駄金でもあって私的諜報活動で、国家権力を私的に簒奪しているとんでもない話です。


安倍首相は本当に日本の情報を強化するんだったら、総理の主導で、まず強制的に真相究明、責任者の処罰、再発防止措置をやるべきです。それとは別に、公文書偽造であるとか、背任、この種の刑事犯罪に、この報道の内容からすると抵触する可能性がある訳ね。それに関しては、東京地検特捜部が、徹底した捜査をするべきだと思う。


それから、特別秘密保護法ができれば、こういう事実関係に関する調査方法は、非常にやりにくくなります。記者が罰せられるかどうかは分からないけども、このインタビューに答えたこの陸幕長、それから情報本部長は秘密漏えいに問われますからね。10年の懲役に縛られるわけです。ですから、特定秘密保護法の議論をしている時に、共同通信が大きなスクープをやったことは、非常に重要な意味ある。ただ、東京でまったく報道されていないですからね。この話しはポシャっちゃいましたからね。」


Q:お話の中で、もし別班の人間がロシアに捕まったら、えらいことになるという話しがありましたけど、捕まったとして、日本政府は何ができるでしょうか?


A:一番良いのは捕まったら自決してくれるのがいいんですけどねえ。ただ、命根性が汚いと、完全に寝返させられます。こっちは国家じゃなくて数十人のグループで、個人プレーを「おまえ、いざとなったら、このカプセルを噛め」と言って、送り出している訳ですよ。


(この別動部隊のルーツは昔の陸軍中野学校だけど)、あれはゲリラ戦の学校なんです。日本が占領されることを前提にして、海外日本政府のなかで、ニッポンと国境を守るために、どのようにゲリラ戦をやっていくか。そういう秘密のネットワークで横で繋がる。 末次一郎さんですよ。お金持ってくるのもプロでしたね。同じ事業で三か所から金を持ってきた。そういうのも含めて、それはゲリラ戦のやりかたなんですよ。平時においてゲリラ戦やったってダメなんですよ。


寝返った場合にはたとえばロシアの諜報機関には完全に、偽情報つかまされて、カスみたいな情報が流れる可能性もあります。それで、日本の政治情勢がどんどん流れる。(いっぽう)それで取り込まれないような、筋の通っているしっかりしているヤツで、向こうの方にとって危害のある人間がいたら、見せしめ裁判になる。そして、日本はこういったスパイ活動やっているんだと、最大限におとしめてフレームアップされる。日本というのはとんでもない国だとされて、日本大使館もやられます。


ですから、私が心配しているのは、『(外国政府から)摘発される事案がでてきていないということは、取り込まれているのではないか』と。少年探偵団はだから危ないんですよ。情報っていうのは、取るために相手と接触しないといけない。そうすると、相手に取り込まれる可能性が常にある。


だからです、外務省でモスクワの大使館員の給料がどうしていいかと言うと、ロシア人に取り込まれないようにするためです。ロシア人に取り込まれて、いくらかの金をもらうよりも、人間の抑止力になる。それに愛国心がありますし、日本の警察に摘発されるのが怖いんです。しかし、なによりも、外務省の身分を失って、生涯の給料全部を失うんですね。それが自分にとって、打撃があるくらいの額だったら、裏切らないですよ。


だから共産圏、旧共産圏とかは、必ずしも物価が高いわけではなくて、生活水準だって、そんなにきついわけじゃないんだけども、日本人外交官の給料をパーンと給料上げているのは、取り込まれないようにするためです。ですから、真相究明するっていうのは、むしろ(取り込まれている人がいないか)そこなんですよ。」


Q:自衛隊以外の組織はどうなんでしょうか。


A:僕は内調には勤務したことないですから、その中はどうなっているか分からないです。けど、内調の場合は、内調の室長と士官っていうのが調に一人ずついますよね。きちんとおさえてある。あそこはそういう意味で機能している。


それから外務省は、諜報活動やっているんですよ。その諜報活動に関しては、特別な電報などの記号が使われています。それは、そのーX情報だとか、Y情報だとか、Q情報だとか。情報源の名前変えないんです。それは、要するに、そういう種類の情報です。普通に電報を読んでいても、そのカラクリを知っている人だけ分かる。それですから、統括をきちんされて、内調と外務省の立場がされている。




(外務省極秘公電の例 資料は、故・日隅一雄記者の記事による


警察庁も当然です。これ、お蔵に入れちゃっているんですけども、共産党の緒方盗聴事件の時に、前例となりましたよね。これは国内ですけれども。警察はかなり広範にわたって、外務省に出向しています。その人たちは独自の暗号を持っている訳です。それで、コンピューターに自分たちの暗号をかけて、やりとりしています。それで、連絡員とかがきて、暗号表の交換だけやっています。


結論から言うと、こういう病的な問題を抱えているのは、私は自衛隊だけだと思います。


Q:自衛隊諜報の件なんですけども、戦前の大正昭和頃は、いまの体制と変わらないですね。おのおのが勝手に諜報をやっているだけで、横のつながりがないように感じるんですけど。今後、NSCとかで、統合されるのでしょうか?


A:二段階に分けて考えなければいけないです。まず、NSCは、情報収集関係ないです。これは、戦争するかしないかの政治的な意思決定です。それから、NSCがどういうものになるかっていうのは、今回のNSCの人材っていうのは一級の人材で、エースを送りだしています。しかし、役人の心理でがあります。


出向先でやり過ぎるっていうのは、親元との利害が対立する、当然ありますからね。そうすると、もし親元との利害が対立するようなことが起きると、次の人材がエースではなくて、エース級になります。少しずつレベルを下げていきます。それで、最終的に使い物にならない。これがだいたい寄り合い所帯です。


初代は 谷内(正太郎)さんが事務局長ならば、NSCはそれなりの統合をできるでしょう。彼は、みなが怖がりますからね。それに簡単にだまされないんです。


他方、安全保障担当の小阪も別途いますからね。あれと一緒ですからね。頭が二つあるんです。ですから、局的にも相当問題がある。それから、情報収集の体制に関しては、距離感とは離れていないっていうことと、あと情報というのは、どの国でも横の連絡ってないんです。バラバラにやって、一番最後のトップの所だけでギュっと抑える。それが究極の伝統でもあって、イギリスでもイスラエルでもロシアでもみんなバラバラにやっている。」


【取材・石井鉱人 文・石井鉱人 編集・江藤貴紀】


 

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