もう一つのブログ系サービスであるライブドアブログ(念のためだが、こちらはまとめサイト以外の普通のブログとしても利用されることがあるのでまとめブログとは限らない)については総PVを示す資料が見つからなかった。しかし、実はNAVERまとめとの比較でどちらのPVが多そうかだけならば算出することが可能である。Who.isというドメインごとの利用度ランクを示すサイトがあるので、ここでライブドアブログとNAVERまとめのURLを打ち込んで比較すれば、「どちらの方がトラフィック量が多そうか」が分かる。
(ライブドアブログのランクを調査したページ)
そして結論からいうとNAVERまとめよりも、ライブドアブログの方がAlexaの評価順位は上であった。NAVERまとめのランクはこの3ヶ月で212位である一方で、ライブドアブログは157位となっており、こちらが勝っている。すると、最低限でもライブドアブログはNAVERまとめと同等以上のPVを持つので、NAVERまとめとライブドアブログを合わせれば、ライン社の売上のうち(さきほどのNAVERまとめ単体の6〜30%に2を乗じて)12%から60%の間がブログ系の広告収入となる(注4****)。
上記のデータを真に受けると、どれだけ少なく見積もっても売上の6%〜30%をずいぶんと上回る広告収入が、NAVERまとめとLivedoorblogからもたらされている(注5*****)。
ところで、この「まとめブログ」には著作権法違反などのコンプライアンス問題がついて回る。
例えばライブドアブログの中で大手のまとめサイト「痛いニュース」はYahoo!が配信サービスを開始したものの、弊社から著作権法違反のおそれがあるとの指摘を受けて、わずか3日でサービスから除外した。
ただネット上ではニュース記事や、(今年2月から)2ch.netとまとめサイトの間で係争となっている書き込みを各種知財の著作権侵害については、余りにも侵害例が多いため、責任追及がモグラ叩きとなり、著作権者が泣き寝入りすることが多いのが実情だ。
ところが昨年11月にWikiLeaksがリークしたTPPの交渉内容によると、著作権侵害の刑事罰については加盟国で非親告罪化する見通しであると報道されている(真意のほどはいまのところ不明)。なお我が国にはプロバイダー責任法が存在するものの(よく誤解されるが)これは民事の損害賠償責任を免除するのみの法律である。
もっとも、同法を(盾にとるような形で)著作権者からのクレームがない間は、民事上も責任を負わないのだから刑事上も違法とならないという行政解釈も存在していた。しかしながら、仮に著作権法違反の刑法犯処罰規定が非親告罪となったばあいには、著作権者から出される民事のクレームの有無にかかわらず、著作権侵害は刑事罰の対象となることになる。
とすると、「まとめサイト」などの著作権侵害行為が刑事罰の対象となる蓋然性が高くなり、LINE社は法的に大きなリスクを負う。(この論点自体は、昨年11月のウィキリークス公開情報で明らかになっていた)。しかし、それに加えて多くのまとめブログの転載元である2ちゃんねるを今年2月19日に、元アメリカ軍人ジム・ワトキンスの率いる海外法人「レースクイーン社」がサーバを物理的に押さえる方法で事実上奪取したあと、3月にはまとめサイトへの転載全面禁止を宣言した。
この行為の合法性と2ch.netの所有権の帰属はさておき、2ch.netに書き込む人間のうち一定数(筆者も含む)は、まとめサイトへの転載を著作権侵害として主張することになった。
また、今年8月にはライブドアブログのサービスを使用する大手のまとめサイト「保守速報」が名誉毀損で損害賠償請求を起こされており、この事件の進行、判決やプロバイダー責任法の解釈如何によってはブログサービス提供者のLINEも(書き込みの放置に関して)名誉毀損の訴訟リスクを負う余地がある。
LINE社はまとめブログを事業の大きな収益源としていながら、コンプライアンス面がグレーなままで訴訟リスクも負っている。にも関わらず同社はこのリスクについて公式には外部に全くアナウンスしていない。例えば先述の業績報告にもまとめブログ事業からの収益割合は触れられていない(なおこの業績報告には「外部監査なし」と申し添えられている)。
今回の不可解なLINE上場見送りの原因を検討するに、2chの管理者交代やTPP交渉による著作権侵害の取り扱い変更、まとめサイトへの訴訟提起などの事態が生じたため、想定以上に法令順守の問題が顕在化したことが要因の一つという解釈は、「海外進出を優先する」というLINE広報部の説明よりは筋が通った仮説である。
なお「まとめブログ」のような(1)海賊版サイトの大規模展開と(2)通信サービスアプリの大規模展開による通信フォームの独占は、実は親会社の韓国法人ネイバーと極めて類似した特徴である。
(9月25日追記:韓国NAVER社のリリースに、NAVERまとめの訪問ユーザ数が月に6000万人という記載があった。ただし毎日の訪問ユーザー数を足したものなのかそれとも、月に6000万人のユニークユーザーがいることを意味するのかは不明。ここで触れられているがNAVERまとめは、韓国のNAVER社が行っている「知恵.In」というサービスの日本版である。)
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