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大規模掲示板2ちゃんねる・ボランティア制度のルーツは芸能界【自発的服従】

2014年6月7日07時36分

大規模掲示板2ちゃんねる・ボランティア制度のルーツは芸能界【自発的服従】



 2ちゃんねるは、営利企業が運営するにもかかわらずボランティア制度によって、人件費を抑えて成り立ってきた巨大掲示板である。もっともその仕組みの中には、有給の社員も含まれていたことも後に判明したが、多数の無償ボランティアも確かに存在した。ひろゆき氏が高収入を公言(サラリーマンの一生分の税金を一年で払った等)とされ、経営者陣は多額の収入を得たと見られるにもかかわらず、業務に参加する人間の多くには金銭が回らない。なぜそんな仕組みが存続できたのか。

 この謎について今までは「表に出てくる」2chの創設者西村博之氏のカリスマ等で説明されることが多かった。だが別に一人、ひろゆき氏よりも2ちゃんの実質的な経営者に近い人物がいる。それは運営会社の未来検索ブラジル(初代代表取締役・現取締役)と東京プラスの取締役をつとめ、また未来検索ブラジルの親会社であるディジティミニミを経営すると竹中直純氏だ。



 この記事では、(1)ディジティミニミ社に公開されている竹中氏の仕事史と従来の報道をもとに竹中氏と2ちゃんねるとの出会いから経営に携わるまでの経緯を振り返り(2)「芸能」という、彼が従来もそして今も携わっている世界の無給インターン(研修生や練習生などと呼ばれたり、単なるお手伝いさん名目だったりする)やレッスン料という慣行との共通項をくくりだす。(3)そしてそれが竹中氏の現在運営するミュージックや動画などコンテンツ系企業のビジネスモデルにも受け継がれて、有給の社員と並列で「無償ボランティア」を求めるから(4)実際に人へ「タダ働き」を行なわせる「2ちゃんねるビジネスモデル」の成り立つ仕組みを考える。



(音楽配信コミュニティサイト運営をするオトトイ社のページより。未来検索ブラジルの「弟会社」である)

 まず、彼の2chとの関わりは2001年5月まで続いた雑誌*「MAC POWER」の連載で西村博之氏と対談することから始まるとされう。それがきっかけでひろゆき氏とビジネスパートナーになったという。そして具体的には①2002年4月にイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社(当時2ちゃんねるの広告部門を担当していた企業)ひろゆき氏と交代する形で取締役就任。(2004年5月まで)②2002年9月、東京プラス株式会社が設立され現在まで同社の取締役③2003年4月の有限会社未来検索ブラジル設立当時は代表取締役(現在は取締役)という道のりを歩んでいる。



(2008年の、インターネット・ウォッチ(©インプレス社)インタビューに答える竹中氏。メディア露出はあまり多くなく、初めて未来検索ブラジル・初代社長の顔を見る人も多いかもしれない。彼とひろゆき氏が「目指している」のは「良い情報管理」らしいが、それが意味するところはよくわからない。)


 2ちゃんねるの経緯と交えてもう一度、時系列でいうと(1)1999年に西村博之氏が2ちゃんねるを立ち上げる(2)2001年前半に竹中純直氏が西村博之氏と知りあう→(3)2001年8月、2ちゃんねる閉鎖騒動が起きる。このときに、多くのIT技術者(プロフェッショナルで料金を取れる水準の人を含む)が無料ボランティアとしてコード改善などの作業に参加する→(4)2002年に2ちゃんねる運営会社「東京プラス」を竹中氏と西村氏らが立ち上げて竹中氏は取締役として参加(5)2003年にもう一つの2ちゃんねる運営会社である未来検索ブラジルを竹中氏が西村氏とともに設立して、竹中氏は代表取締役に就任(ホットリンク社(東証マザーズ3680有価証券報告書参照による)である。そして、この2社は、2014年の2ちゃんねる分裂騒動にいたるまで10年以上、営利企業として利潤を上げながら、多くの無償ボランティアを擁して運営業務を行なわせるというビジネスモデルを構築・運用した。


 ところで、この「同じ仕事を有給の社員と無給のボランティアが行なう」というスタイル、実は竹中氏がかつてかかわっていた芸能界に源流がある。いくつかの音楽関係事業を経て、1997年の株式会社ディジティミニミ設立以来で行なった業務として彼が自らあげているものをいくつか抜粋すると、1998年に『MPIXIPM』(坂本龍一&岩井俊雄によるコラボレーション)ネット技術ディレクタ、1999年にムーンライダーズとワーナーレコード、MAAによるデジタル音源配信実験『Pissin’ Online』2000年より『鶴田真由サイト』などがある。




(未来検索ブラジルの親会社であり、竹中氏が代表取締役を務めるディジティミニミ社の業務として登記された「目的」12個のうち3から7までは芸能業である。ウィキペディアでは出資率は100%という情報があるが、確認中である。)


 芸能の世界では一般的に、(1)大手でも最初はレッスン料金を取られるが、(2)やがて無報酬のエキストラなどという名目で無給ながら仕事をもらえる場合が出てくる。(3)そして成功してプロになった一部の人間のみがデビューできて、その中でもスターになった一部の人間のみが、多額の収入を得られる。つまり1、2、3とサクセス・ストーリーが重なるごとに位階の上昇する進んでいくカースト制度である。(なお芸能事務所では、収入の多くが、成功するスターの稼ぎではなく夢を持った研修生のレッスン料やオーディション料、プロモーション用写真撮影料を課すである「養分ビジネスモデル」をとっている場合がままある。そして所属「タレント」の間で競争心を煽ってより大量の「自主的なお手伝い」を課すなどして経費を浮かせるのもよくある。


 この構図は2ちゃんねるのボランティア制度と極めて近い。(複雑なのでやや簡素化して説明する。)まず(1)ただの無料一般閲覧者は、広告料収入には多少、寄与できるが様々な理由で書き込みの投稿が妨げられることがあり、利便性が悪かった。ただし(2)●と呼ばれる有料会員のようなものになれば、過去のテキストを優先的に閲覧することが出来、書き込みへの制限も無くなる(3)そして「キャップ」と呼ばれる特殊な資格を取れば、ニューストピックなどを人気のあるボードで作ることの出来る「記者」と呼ばれる権限を得ることが出来たり、「削除人」として違反投稿の削除などを行なうことも出来る。なお「キャップ」の中にもヒエラルキーが存在しており、「二軍」からランクを上げていって上位の人間の思し召しがよければ昇進できる仕組みだったようだ。これも功徳を積んでいく度に、レベルが1、2、3と上がっていく。(実際はボランティア関係活動の一部に運営企業・ブラジルの社員が参加したことが判明している。仮に給料をもらっている彼らと張り合おうとしてまともに「タダ働きのボランティア」をやろうとするものがいれば、本人は馬鹿を見るが竹中氏・西村氏らは笑いが止まらないだろう


 なお、ニワンゴ社取締役(2013年2月には退任)としてひろゆき氏の携わったニコニコ動画(コメント及びアンケート全てと紐ついた個人情報の第三者提供に同意しないと閲覧できず、プライバシー保護をのラインを大きく下げた2ちゃんねるとも言える、動画サイト)も似たようなものである。(1)一般ユーザはクリック制の広告収入にたまに寄与するだけだが、回線の込み合っている時などは画質が落ちるなどの不利益を被る(2)ただし毎月500円の「プレミアム会員」という有料会員なれば、自ら動画を配信できて閲覧の際も高画質を楽しめるカーストに上がる。(3)なおプレミアム会員になったとき等に、チャット動画などのコンテンツを制作・配信するのはユーザだが、その利益はユーザには還元されず実質的には無報酬である(ニコニコ動画にとっては、「ボランティア活動」をしてもらっているようなものだ)。また極めて人気になれば、ニコニコ超パーティといった「コンサート」に出演することまで出来る場合がある。コミュニティの中で1、2、3とステージが上がってランクの高い人間になる。




(これまで取材したところでも、多くの芸能事務所で「普通の事務仕事」を給料なしで役者・モデル・歌手などを志望する「卵」の人たちがこなしている例が多い。また以前に東京労働局・情報官を筆者がインタビューしたところ、芸能関係は「名ばかりボランティア」を実質上はたらかせる無給労働で労基署が入る割合がとても多いという説明をうかがった。)


 

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