11月21日、東京都の外国特派員協会で民主党の枝野幸男幹事長(福島事故当時・官房長官)が会見に出席し、次の選挙に向けて、目標と見通しなどを語った。
まず枝野氏は、「自分は日本の政治家で今年の中の解散があると行って来た1人。それは安部さんの立場に立ったときに、いちばん自民党にとって都合のいい時期に選挙をすると考えたからだ」といって先見の明を強調した。だが「2年前の総選挙で負けた最大の原因は何か、またそれは解決できたのか」と筆者から尋ねられると「党内がガバナンス出来なかったことだが、これはこの2年間で飛躍的に改善をした」と解答しながらも「問題はこの改善を国民の皆さんに知ってもらうのには時間がかかること」と発言。そんなに早くから解散を見越せていたのなら、なんで国民に民主党のよくなった部分を周知できなかったのか。それは民主党幹事長としての失敗でないかと責めたくなるお返事をいただいた。
さらに、今年の9月に公開された、枝野氏らの福島事故調・調書について「なぜ民主時代に出さなかったのか、出していたら民主党のイメージももっとよかった気がする」と尋ねてみたところ、自分らの権限じゃなかったからという趣旨をアクロバティックに述べた。
(政府事故調HPに公開されている、枝野幸男民主党幹事長の調書)
具体的には、「我々の政権の時に、政府の中枢自体が調査の対象だったので、その運営自体を全く事故調査委員会に委ねていた。それは、(調書などの)公開をするかしないかをふくめてであり、その事故調査委員会の公開をするかどうかの判断に政府首脳が関わることはかえって事故調査委員会の信頼を損なうと考えていた」という。
しかし一体全体、どこの誰が(とくに民主の隠蔽体質と批判されている時期に)貴重な調書の公開がされて事故調査委員会を信頼しなくなるいうのだろうか。あとこの理屈で行くと「民主党政権だったので、事故調査委員会の調書は公開することに問題があった」となってしまい、2012年に民主党が政権から転がり落ちたおかげで福島事故の資料が公開されて、心底よかったということになる(筆者はこの発言を聞いてこう感じた)。
なお個人的には、枝野氏ら当時の政権中枢の福島事故対応や「ただちに健康に影響はない」という一生忘れられない発言、そしてその後の情報公開の不十分さで恨みを買ったことが民主党の壊滅した原因だと思っている。また言うまでもないが、福島事故の調書を出さなかった理由はなぜかという質問と、民主党がぼろ負けした理由はなぜかという質問は完全にリンクしている。
(次世代への責任が大事というフレーズを使っているようである)
他にも、よく考えると辻褄の合わない(か食い合わせの凄く悪い)解答が多かった。例えばこの選挙戦での目標議席数を聞かれると「選挙は血を流さない戦争だ。なので1人でもやられる被害者がうちに出るという気持ちで戦は闘えない」という勇ましく解答。しかしその後にイタリアの記者から「今回は安倍総理に民主党は裏切られたと思わないか?というのは、前回の選挙で負けたのは民主党が消費税増税をするとしたからだ。なのに今回の選挙では安倍総理は自分の判断で増税を見送るという言い方をしている。2年半前に、この様な消費税増税の合意をしたのは、民主党はナイーブ(アホ)ではないか」と質問を食らうと理想的な民主社会を語る「べき論」で対応して「私達というか国民が裏切られたと思うべきだと思っています。」と当事者意識の希薄な発言。その上で、「民主党がナイーブすぎたという指摘は真摯に受け止めるが、それと同時にずるがしこすぎる政治と受け取られたら国民の信を得られない」と供べてしまった。
しかし、あなたたち民主党が騙されたと言われているのに、国民の問題に話をすり替えても何の意味も無い。それに「(仮に選挙が枝野氏の言うように「戦争」だとしたら)戦争をするならナイーブな指導者よりずるがしこい指導者のほうがましな指導者ではないか」と思われる。
なお帰りはエレベーターでいっしょになった記者クラブ系メディアの記者ら3人(特に誰も質問しようとはしていなかったと記憶している)が「ごめん、わたし今日遅れてきたけど前半で何か大事なところあった?」とか「いつも通りだったよねー」と「特に書くことないよねー」と、残念な感じのやりとりをしていて、大学にいる出来の悪いゼミ生のようだった。
今の時代なのだから、一方的にビデオの録画を見るんじゃなくて、双方向でやりとりできること位が会見の意義だろうと思われるところ、この人達は別に会見場にこなくてもよくて、他のメディアがわりとすぐにYouTubeなどにアップする会見動画を見ていたら、それでいいのではないか。
会見のほぼ全文は次ページの通りで別に見る価値はない(会見内容が良かったときのために念のため会見場で打っただけで、別にあとからテープ起こしなどをしたわけではない)が、資料として使いたい方がいたときのためにいちおう収録する。付言すると、記者会見の面白さは、あらゆる言語表現と同様、「誰が喋ったか」ではなく「何を喋ったか」で決まる。例えばだが、この元官房長官で内閣のスポークスマンだった枝野幸男氏よりは、今年の夏に同じ外国特派員協会で、フランチャイズビジネスの問題点について会見をされたセブンイレブン店主の三井義文氏の方がよほど中身のある話をしてくれた(次のページを開くよりは、そのリンクを見ていただきたいと思う。また枝野氏のしゃべりと三井氏のお話のどちらに内容があるかを比較してみるのも、一つの試みである。)。
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