7月30日、東京有楽町の外国特派員協会で、セブン・イレブンのフランチャイズ加盟店・佐倉表町店(千葉県)の店長をしている三井義文氏が、コンビニ店主の過酷な労働環境と不公平な本部との契約関係について、国内外のメディアを対象に講演を行った。不明瞭な契約書に、自店舗の会計書類や仕入れ伝票も見せてもらえないーー建前上は個人事業主にも関わらず売り上げはいったん本部へ全納して、そこから「定額」の金銭が本部から店主へ払われる仕組みは、労働者と変わらないのではないかというのが同氏らの言い分だ。以下、会見の様子をお伝えする。
三井氏ーー 私は今、千葉でコンビニのオーナーをしています。ここで、私の話す問題は千葉だけでなく全国のものと思って頂きたいです。ご存知の通り、コンビニエンス・ストアは社会のインフラと言われて日本中にあるということですが、そこで働いている加盟店の人の実態がどうかということは余り知られていないです。
コンビニエンスストアはフランチャイズシステムを利用して行なわれています。このフランチャイズというシステムは、本部が仕事のノウハウを全て教えます。私は、小売業の経験がなくてコンビニエンスストアをやっていますけれど、小売業の経験がなくても出来るということで、素晴らしいフランチャイズのシステムと言えると思います。
当然、その初めには契約を結ぶのですが、私がこの仕事を初めて驚いているのは、契約にないことが次から次へと起こっているということです。
今日はメインに2つのことをお伝えしますけれど、まずコンビニのフランチャイズの本部は加盟店に対して、「仕入れの代行及び会計の代行」をするということになっています。
会計の代行をすると言うことですので、我々フランチャイズで売れたお金の全額は、全て本部へ送ることになっています。ただその際には、お店ごとにキャッシュカードを与えられますので、送るときには当然に自分の店の管理するお金だと思って送金しました。
店を始めて当初は店を回すだけで精一杯でしたが、自分が毎月売れているお金から払っているうちの今の残高はいくらくらいなんだろうということを訊きました。ところが本部社員の回答は「それは分かりません」ということでした。
それはおかしい、私は毎日送っているしこのキャッシュカードを使っているから明細が分かるはずだと言ったんですが、それは本部の会計なので、全部の12000店のうちお宅の会計は特定できないということでした。これはどういうことかといいますと、私たちの日々、売れたお金は本部に送金することで本部のものになっているということが分かったのです。
次に起きたことですが、私たちが本部から仕入れる価格は消費者が街で小売りから買う価格より高いということに気づきました。本来、契約したときには大きいチェーンに契約しているのですから、スケールメリットがあるので安く仕入れることが出来ると思いました。そしてそれは契約書にも書いてあるのですが、実態は自分で店に買いにいった方が安く仕入れられるということでした。
このように様々なことが起きるので、本部の方に色々質問するんですけれど、余り色々質問すると、本部を信頼していないのですかと言われるのです。で、この信頼関係が壊れると、あなたが契約の更新期日を迎えた時に契約の更新が難しくなるかもしれないという脅しを受けました。
そういうわけで、多くの加盟店はいろんな疑問点を持ちながらも、不満を言わずに店をやっているのが現状です。それでこれは個人的には解決できないことだと思って、弁護士の方と労働組合の方に相談したということです。
司会ーーでは質疑応答に移ります。
Q まず質問させて頂きます。この件でビックリしたのですが日本で、フランチャイズの契約を規制する法律がないことに驚いています。これはどういうことでしょうか。21世紀の民主国家で、こういうことはめずらしいのではないでしょうか?
A 中野和子弁護士 アメリカでは各州にあります。韓国、マレーシアにも法律はあります。しかし日本にはありません。おそらくこのセブンイレブンという巨大な会社がこういう法律を嫌っているという政治的な力があると思っています。
多くの議員に働きかけをしてきたが、関心を持つ人が少ないという状況です(ただし会見終了後に質問したところ、与党・野党を問わず、どの国会議員も「コンビニエンスストアが問題なのは認識している」というが、積極的に動く議員は少ないという。一人だけ、この問題を扱っていた議員がおられたがいまは落選しているとのことである。)。
Q 日本での状況の説明を頂きましたが、海外でのセブンイレブンの状況はどうなのでしょうか?
A 三井氏ーー韓国については知らないのですが、アメリカのフランチャイズの方とはお話をさせて頂いております。状況はアメリカの方がこの5年間、特にセブン・イレブンが日本の経営傘下に入ってから、非常に本部と加盟店の関係が悪くなっていると聞いています。
中野氏ーーそれから韓国なんですけれど、昨年に調査に行きまして、やはり同じような状況があるという風に聞いています。ただ韓国ではセブンイレブンとロッテの資本があり、ロッテの方がセブンイレブン本部のような役割を果たしているということです。ただし韓国の法制度では距離制限を設けたり、かなり改善をしています。
三井氏ーーいい忘れたことがありますが、日本とアメリカのコンビニフランチャイズの大きな違いは、日本では先ほど申し上げた、仕入れの価格に疑問があるときに、仕入れの支払伝票や領収書を見ることも許されないところです。かつ、仕入れ先への連絡も禁止されます。しかしアメリカでは独立の自営事業者として、全ての情報は開示されます。
(「コンビニエンス加盟店は自立的な事業者なのか、あるいは本部のための労働者なのか」と題された外国人記者向け資料)
Q 会計の内容が開示されないというお話がありました。他の手法で、この店舗にこれだけの売り上げがあってこれだけの利益を得たという情報をつかむ手段は全くないのでしょうか?
A 中野氏ーー日本で、本部はそういう計算書類を作成しています。かつバランスシートもあります。しかしそこで出た利益が、我々の加盟店に振り込まれることはありません。我々の収入は毎月、本部と決めた一定金額しか振り込まれません。
Q 三井さんへ質問です。店主の裁量が限られているというのは、どういうことかもう少し細かくお願いします。
A 三井氏ーーまず、店のレイアウトは本部が決めます。商品の企画も本部が決めます。商品のどれを選ぶかは我々にまかされますが、本部が推奨している商品を取っているかどうかが、推奨商品導入率として他店との比較票を渡されます。それと商品を売り込むためのPOPを私たちの店では購入したのですが、そのPOPは本部の方針と違うので店の経費から出すなという命令を受けました。
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