組閣で大臣らの選任を行う際に、閣僚候補者に不祥事がないかを事前に調べる「身体検査」について警察庁がその少なくとも一部を担当していることが、第一次安倍内閣の内閣改造時にアメリカ大使館の作成した機密指定文書に記載された河野太郎衆議院議員の発言から、分かった。
この文書は、ジュリアン・アサンジ氏が代表を務める情報告発サイト、ウィキリークスが開示した25万通の米国国務省、公電の中から発見されたもの。
(河野太郎氏が、アメリカ大使館員に語った記載箇所。National Police Agency,NPAとあるのが警察庁。)
これによれば、河野太郎氏は小泉内閣時に法務副大臣としての正式な内定通知を待っていたがなかなか連絡が無いため、6時間して官邸に確認の電話を入れたものの、「警察庁が現在身辺調査を実施中である」との返答しか得られなかったとペラペラ述べている。
身体検査の実施機関に警察庁が含まれていることが、具体的な公文書で明らかになるのは初めて。
もっとも、これまでも各種報道で「身体検査」については伝聞で、内閣情報調査室や公安調査庁、警察などの情報を使っているとされていたが明言した人物や公的文書が見つかるのは希である。たとえば江田憲司議員は取材に対して「具体的な方調査方法は守秘義務があって話せない」としており、また内閣官房参与の飯島勲氏は、90%は公開情報で行われるが、残りの手の内は明かせない」という旨の発言をしたことが報道されている。
しかし、今回の河野太郎氏発言部分を読む限りは、警察庁が(おそらく犯歴や、こんご立件できそうな前科その他のデータベースを使用して)大々的に関与しているようである。実際、人員数的にも内調や公調に比して、都道府県警察を含む警察機構の方が、圧倒的に大きく明らかになってみれば驚くべき話ではない。
しかしそうすると2つ問題点が持ち上がる。まず、一つはもし議員や関係者の犯歴について警察が情報を把握しているのなら、それは「身体検査」を待つなどするのではなく、さっさと検挙するべきではないかと言うことである。
そうせずに、犯罪の証拠などを身体検査までの秘密カードとして保有している合理的な動機があるとすれば、それは犯罪の摘発よりも、政界への影響力確保を警察機構が優先していると推認される。またもし、一般人なら検挙されるのに議員なら犯罪の証拠を握られていても検挙されないというのならば、これは不公平である。
また第二に、江田憲司氏らが守秘義務といって国内向けにはぼかしていたよりも、踏み込んだ内容を(同盟国とはいえ)河野太郎氏がアメリカ大使館員に話していることである(実際、筆者もうすうすは警察あたりがやっているだろうとは思っていたが、警察を使って身体検査を行っているという確証はこのWikiLeaks文書を見るまで得られなかった。)。
もっとも、この程度の内容は、アメリカ大使館なら把握していたあろうから話しても差し障りないのでは無いかという考えもありうる。
しかし、わざわざ公電のなかに長々と記載しているので聞き手にとって印象的な話であり、有益な情報なのだったと解釈されるべきである。加えて、今回ウィキリークスにアメリカ経由で流出したことをみても分かるように、秘密情報は拡散すればするだけ発覚しやすくなる。そのため余計なことは誰が相手であれ喋らない方がよい。
最後に、前回の記事でも触れたように、国務省公電の中では河野氏と飯島氏が、現在の米国大使館にとって日本の政界情報のメインソースである。
(WikiLeaksに流出した、記事冒頭の画像にある、福田康夫総理を酷評する飯島勲氏の見解。やはりCONFIDENTIAL(機密)の指定がなされている文書の一部だが、Iijima Critical of Fukuda という一節がとられて異例の長さで参照されている。)
ウィキリークス漏洩公電を読む限り、河野氏と飯島氏はアメリカのエージェントである。この両人に知られた内容は、まずアメリカ政府に握られると覚悟しておいた方がよいと思われる(逆に、アメリカに知られたくない情報は、何としてでもこの二人に握られないことが必要である。)。
皮肉を言えば、これらの漏洩文書は身体検査の腕前について一家言ある飯島勲内閣官房参与がアメリカ政府への情報提供者であることを示す「身体検査」の露骨な結果である。
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