冒頭にある資料の通り、米国政府は複数の最悪シナリオを作成しており、今回開示されたのはそのうちの一本です。2号機のみから1、すべての燃料が一日のうちに放出されることが予測されるバージョンであり、総放出量はもっとも少ないけれども、急速な飛散が仮定された内容です。そして今後も、別の最悪シナリオに従った汚染と対策の推奨マップが開示されていくと思われます。ただし、断り書きとして、これらのシミュレーションの正確性は以下の通り、仮定された放射性物質放出量に依存しているなどするため、実際の対策に付いては関係機関の判断が改めて行なわれるべきであるとされています。
また、2014年2月に米国で発売された書籍(Fukushima The Story Of a Nuclear Disaster)によりますと、NARACのシミュレーションのうち一つは、アラスカにいる1歳児の甲状腺被爆量が350ミリシーベルトになるということですの記載があります(128貢)。NRCからの開示資料では現在のところ、この内容は確認されていません。しかしながら、同書はアメリカ政府の2月末に行なった情報公開に先立って、同政府の最悪シナリオが、1号機から4号機の原子炉と燃料プールからの放出のみを問題にしているという正確な記載をしています(同書132貢)。そのため内容において、一定の信頼性がおけると評価でき、今後に開示される資料の一つもそれに沿った資料である蓋然性があります。
(以前のNRC開示文書にあった「5 Worst Scenarios」を対象に出した開示請求書です。 ただし、3月30日に発見された資料は、他のジャーナリストの開示請求対象にあった内容です。)
なお日本側の最悪シナリオとして公開されたバージョンの、近藤駿介氏作成とされるシミュレーションは、急性期の症状と避難、風向きなどの問題を扱っていません。その点で米国公開資料のほうが自然な内容と考えています。
ちなみに今回の開示資料は、海軍のスタンプと機密指定のランク分けが冒頭にあることからいったんアメリカ海軍に転送されたものがNRCに再度、送付されたもののようです。
(この記事は、3月30日に加筆・修正したバージョンです。さらに資料の収集と分析が進み次第、再度の加筆と訂正を行なう予定です。)
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