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「 利益を出すには仕入を減らすしか余地がない」 コンビニの理不尽契約を加盟店が語る

2014年8月8日03時49分
カテゴリ:国内

「 利益を出すには仕入を減らすしか余地がない」 コンビニの理不尽契約を加盟店が語る

先日、外国特派員協会でセブンイレブン本社との加盟店契約が不透明かつ一方的で予測も出来ず不公平な内容であると主張して会見をおこなったのは三井義文氏(セブンイレブン佐倉市表町店・店長)だ。


では、その問題という加盟店の収支構造はどうなっているのか?あと何で、そんな契約を結ぶ人が大勢いて今もつづいているのだろうかセブンイレブン・佐倉市表町店で三井氏に伺うと、契約構造そのものに問題があり、モラル・ハザードが本部に生じるーー従ってコンビニ加盟店は自営業者の独立性を奪われているため合理的マネジメントが不可能な状態におかれているという。ではなぜそうなるのか、まず経営の収支構造から検討する。(「加盟店基本契約書」の内容は、やや古いものとおぼしいものがこのリンクにアップされている)


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店の収益の基本をきわめてカンタンに確認すると他の商売と同じで「①売上−②経費=③利益」だ。(*実際は本部へのロイヤリティなどで、もっと複雑になる。なお本稿では「経費」などの言葉は正式な会計用語ではなく、簡略化して使います。)。だが、そもそもこの方程式の要素それ自体に、コンビニのフランチャイズでは問題があるという。①と②がとてもFIX(固定)性が高いため、③の利益が出る余地を捻出するのが困難な泥沼的契約というのが要点だ。


まず①「売上」については、商圏を左右する「立地」の条件が勝負になる。これ自体は仕方がないが、そこから先に「経営努力をさせてもらえる余地がない」というのがおかしいという。


例えばだが、三井氏は近所への宅配サービス(いまではセブンで取り入れられているが、その前の話)をやってみたいと考えた。しかし、本部の方針でそれは許されなかった。(別件だが、かつては加盟店の裁量での値引き販売に対する禁止も加盟店と本部の間で訴訟になった。)


そして、売上のパイは後述のーー本部都合で行われるーー「ドミナント戦略」に基づいたセブン-イレブン・ジャパン加盟店同士や他チェーンの出店競争で奪い合いになる。パイの総量は変わらないのに、コンビニ本部は各社ともに加盟店が増えることにメリットがあるため、構造的にこの問題で小売店は苦しむことになる。


なので売上は下がる余地があるが、上げようがないというのが①がFIXという理由だ。


第二に②の経費は、小売業にとっての固定要因、土地代・光熱費などの他、多くが(1)「仕入」と(2)「人件費」で占められる。


ここで(1)「仕入」について本部との間で利益相反の問題が出てくるのが根本的問題だ。まず、本部にとっては小売りに卸すことが売上げになるが、売れなかった場合の廃棄リスクは加盟店が持つ。なので本部は卸せば卸すだけ利益が上がる「加盟店こそが本当のお客様」という構造だ。


つまり商品を消費者が買わなかった場合の損は加盟店が被る。だが、本部はとにかく店に品物を並べさせることが利益で、そこに会社としてのインセンティブがあるため小売りの都合は二の次になる。ここでは売れ残りの可能性のある中で在庫をいくら卸させるかがゼロサムゲームの構造になっていて、もろに両者の利害が対立する。


仕入については、もう一つ格差があり、「支払サイト」もズレている。そもそも加盟店は毎日、その日の売上全てを本部側の管理する口座(コンビニ業界用語で「オープンアカウント」という)へ入金しないといけない。


そして本部から仕入業者への支払タイミングは、月末締めの翌月(末)払いとなっているので、この支払サイトのラグからの儲けはかなり美味しい。そのぶん、資金の流動性を使用して、運用するという小売りビジネスの基本的なうまみが本部に収奪されているーー全く加盟店にないーーという。


そして、経費のうち(2)人件費はほぼFIX(営業時間は24時間で、あとは店舗の規模と商圏次第)のはずだったが「ドミナント戦略」と業界の過当競争で割を食っていて、予想外の打撃を受けているという。


ドミナント戦略は(有名な話だが)一つの幹線道路や近隣地域に店を集中立地させることで本部の配送コストが減るーーその分、本社は経費が減るーーというやり方だ。だがフランチャイジー・加盟店にとっては商圏の奪い合いになるだけでなく、実は人手も奪い合いになる。近隣に店舗が増えても、そのぶん労働者の供給が増えるわけではないから、ドミナントが進むと限られた人手を近くのコンビニ同士が取り合う構図だ。


なので仕方なく、求人誌やバイト募集のウェブサイト、で応募を受け付けることになるが、その分のコストも店主側が持つ(*本部都合と負担で募集をかけてくれることもあるが、それは本部の旨先三寸で基準も不明だという。)。だいたい一回に5万円ほどをかけるという。

時給を上げたら利益を直撃するが、仕事はどんどん高度になる(誰でも知ってるとおり、毎年のように新しいサービスが導入される)。そのぶん人集めは苦しくなるばかりだ。


でも突っ込みたくなる人もいるだろう。「そんな契約なら結ばなければよかったじゃないか。きちんと契約書を読んでからハンコを押せ」と。


だがそもそも(1)セブンイレブン社と加盟店には、契約書にないことが起こり続けて(2)しかもそれらはセブン独特の用語で理解が困難になっているのだという。


例えば(1)前述の買掛金にしても、「加盟店の方には計上させないぞ」とは書いてない。それに新しい業務内容を加盟店が要求されても文句は言えないーー例えば新しいカードの導入のようなものーーという根拠も実は契約書にはない。


契約書には、「セブンーイレブン・システムマニュアル」を「手渡される」とだけ書いてあるが、これが基本の加盟契約書の数倍の厚さで昔の電話帳のようなものだ。これは新しいものが本部から一方的に送られてくるとそれに従わなければいけないと告げられるが、それは契約が終わってからしか分からない。




(ボリュームの比較のためにセブンイレブン・マニュアルを載せているのはMacBook Air*(写真では遠近感が生じるが実際にとにかく分厚い)。)


例え契約の時に弁護士へアドバイスを頼んでいたとしても、この契約書でそんな事態が生じると知るのは普通では弁護士にも分からないはずだという。


本部から請求される、仕入商品分の「仕入伝票」も明細が教えてもらえない。そんなことは常識では考えられなかった。(この不明瞭な請求書を突きつけられるのが、三井氏の最も憤慨している点の一つで、「こんなの商売じゃない)という理由の一つだ。)これも予測は無理だろう。


そして(筆者にとっても意外なことに)POSシステムも、店舗側のインターフェースは異様に遅れているという。例えばイトーヨーカドーなら自店舗の前月の売上などについて見ることの出来るベーシックなデータが、セブンのPOSでは端末に見えないのだ。何でこんなに遅れたものにしているのか、不信感がある。


こういうことに、おかしいと本社の人間に言っても「セブンイレブンイメージ」ですとか「セブンイレブンシステム」なんです、という独特の用語で返事が来る。



特殊な言葉についていうと(2)例えば毎月、「定額」をもらえると本社からは言われる。だがこれは実は語感と違い店とセブンイレブンの契約の中で生じた会計から「毎月ここまでなら店主ももらえますよ」という意味だ。実はあとの分、毎日送金するお金はセブンイレブン本社の管理する口座に吸われたままで、つまり「定額」とはセブンの本社側が払わないといけないお金のMAX部分だ。なおこの定額は三井氏の場合、毎月21万円だ(*そこに「定額チャージ」という項目や「(配偶者)」という変わった項目もあるという)。


語感からイメージされる、経営状態が悪くてももらえる最低保障給ではないので、リスクだけは負っている。


「契約のおかしな部分は一人でなく、他のコンビニ店主や弁護士などと話す中でここまで分析できた。」という。ここまでーーかなり複雑な話だがーー以上を言語化できる加盟店・店主はまれだ。ほとんどの店主は、書類を見せられても独特の用語が使われていたら分からなくなるだけで、何が問題か頭の中に疑問を抱けない。


そもそも「契約ですよ。」と言われたらそれで萎縮する。特に「セブン-イレブン・ジャパン」という大会社から言われたら「自分の方が間違っているのかな」と思うオーナーが大半だという。(おそらくそうだろう。)


ただし三井氏の場合、10ヶ月ほどやっておかしいと思った。何より仕入伝票がブラックボックスなら、本部が好き勝手に出来るじゃないか。そして、「在庫の仕入」が利益を圧迫していると気づいてきた。


「それで今は発注を減らすことで利益を出している。」という。ただ、それしか儲けを上げる余地が実質的になくて(それに気づかず、「ぼーっと」本部の言いなりになって在庫を入れる店長も多いという。そのばあい自分で必死に店に出て人件費を減らすか、道楽のようにやって赤字を続けるかだ)、しかも自分の取り分は「定額」はおかしいと思う。


帳簿と契約書が読めて、自分のものを言えるーーたぶんかなり人口の中では少ない人だろう。では、さらに「コンビニフランチャイズの仕組みはおかしい」と彼が外に向けて発信しているのはどうしてだろうか。


 

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