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鈴木達治郎、原子力委員会・委員長代理インタビュー

2013年12月27日21時39分

鈴木達治郎、原子力委員会・委員長代理インタビュー

 原発の安全性確保に政策決定の透明性といった福島事故以降、日本の原子力政策が持つ課題は果たしてどうあるべきか。政府の原子力委員会・委員長代理の鈴木達治郞氏にお話を伺ったので、お伝えする。

(注:この記事中できわめて重大と編集部で考える箇所について、鈴木達治郎氏より、訂正の要求がありましたので、そちらを2ページ目にお書きします。)


鈴木 NRCの議事録を出していたの、あなたが。


ーー ええ。あれは報道で初めてお知りになったのですか?


鈴木 あれ、何かいてあったんだっけ?


ーー ばーって時系列で電話会議の要約が、秒単位で書いてあるやつですね。


鈴木 あれって、公開してる人はあんまりいないからそれで面白いなと思ってツイートしたんだ。

 中身はあんまりよく見てないんだけど、ぜんぶ公開されてたわけじゃないんだよね?ウェブサイトで。


ーー ええ。


鈴木 マスキングされてますよーって言ってくれた人がいて。



ーー 先日、透明性の確保というお話をされていました。それでメールなども保存するということでしたが、これは公開の幅が広がると言うことでしょうか?

 そもそも(原子力委員会の)メールというのはもともと公文書ですよね。これに加えて例えば鈴木先生の個人アドレスのメールも公開されるのでしょうか?


鈴木 それはオフィスのものだけです。


ーー あと情報公開法は、不開示事由というのがございますよね。例えば個人情報とか。それまでぜんぶ出すと言うことですか?


鈴木 今までの法律上の要件を変えるというものではないです。ただ内規として、特定の政策文書を作るときの関連文書というのを取っておく。要するに今までは、消しちゃうと言うこともあるわけ。もちろん今でも個人的なメールだったら消しちゃうこともあるかもしれない。

 そうじゃなくて例えば見解文を出しますというときに、その見解文に関わる関連メールはちゃんととっておいて請求されたらすぐに出せるように管理するのです。

 政策決定に影響を及ぼすメールは取っておく。これを今までやっていなかったんです。他方であんまり記録を取っちゃうと・・・「インフォーマルだから意見交換が出来る」という面もあるよね。


ーーええ。


鈴木 だから記録を取らないという価値もあるかもしれない。それはトレードオフなので、記録は取っておくけど何年間かは出しませんとか黒塗りなら出しますとかそういうのはありかもしれない。ぜんぶ録音をとっちゃえという議論も、あったんですよ。

 でもうちがそれをやっちゃうと他のところにエラい影響を及ぼす。だから我々は素直に公文書管理法を読んで、その精神に則ってやらないといけないということをやっている。今の法律の枠を超えるものではないです。


ーー (ジョセフ・ナイとアーミテージが来たとき)海外からも別の批判がありましたよね。「プルトニウムを持っていて発電に使わないのに何のためなんだ」みたいな。個人的には、3.11があって事故リスクを見直さないといけなくなったから予定よりも消費量が減っただけだよという気もしますが、いかがでしょう。


鈴木 それは長い話になるんですが、アメリカが批判しているのは「今あるものを燃やす見通しがないのに、これ以上再処理することについて」疑問を呈しているわけです。これが不当な批判とは、思わないです。

 でも一方でこちら側の言い分もちゃんと伝えれば分かってもらえるところもある。だからコミュニケーションなので、誤解しているところもあるし事実が伝わっているところもある。それをぜんぶ否定することではなくて、正当な面はああそうですねという。それを一方的にやっちゃうと、なかなか溝が埋まらないです。でも謙虚な気持ちで話し合えばそんなに意見が食い違うことはないですよ。事情をぜんぶ分かっている人はいないので、それを伝え合うんです。隠しちゃうとか誤解を招く表現をするのが一番よくないですね。


ーー いま、国内で原発を再稼働させるかどうか、仮に再稼働させるとしたらどこの原発かという議論があります。もちろん、電力の需要があるから再稼働ということですが一方で安全保障上の問題もあります。「純粋に安全保障」の問題として、住民を避難させやすいかどうかなどから見て、いちばん再稼働させるのに向いた原発はズバリどこだと思われますか?


鈴木 うーん、分からないな。それは質問の意味が分からない。テロなどするには、動いている原子炉でなくてもいいということが今回わかったじゃない?


ーー ただ一方で動いている原子炉の本体の方が・・・


鈴木 動いていない原子炉でも同じ効果をもたらすと言うことが今回わかったじゃない。


ーー ただ、核燃料がなるべく熱を持っている方がその後の処置も大変になりますよね?


鈴木 どっちが大変か微妙なところですよ。使用済み燃料も十分に危険であると分かりましたよね。


ーー いえ、使用済み燃料であっても炉から取り出してすぐの方が熱いじゃないですか。


鈴木 だけどどういうテロを考えているかによるんだけれど、動いている原子炉をやっつけるというのは大変なわけですよ、逆に言えば。

 言ってる意味がよく分からないんだけど、もし再稼働することによって急激にそのリスクが高まるということをおっしゃっているとすると、そういう面はあるかもしれません。   

 ですが、それは核物質防護・核セキュリティのために措置をとっています。なのでもちろんそれを満たさないと稼働は認められません。今回の新しい規制基準は核テロに対してもそれを想定しろということです。今までよりはずっと安全な基準になっています。

 

 再稼働させることによってテロが起きるんじゃないかというのは、そういう仮想のテロは今でもあるわけです。だから今でも防護しています。ちゃんと新しい規制基準の中に核テロ対策も入っています。基準を満たせばもちろん、だからリスクはもちろんゼロじゃないけれど、そこで突然リスクが高まると言うことはないですね。


ーー 戦争の際のリスク、ミサイルが飛んできたらどうするんだみたいな批判にはどう答えられますか?イスラエルのオペレーション・オペラみたいに原子炉自体を狙ってくる場合もあるわけじゃないですか。


鈴木 それはあるかもしれないね。はっきりいってそういう意図を持っている人たちに対しては、抑止力しかないですよ。原発どうこうの問題じゃなくて軍事安全保障の問題ですよ。だからそこで原発を動かすかどうかの議論をしても意味がないですよ。抑止力で対応するしかないですよ。それ以上のことは我々には言えないです。いわゆるテロ対策には十分にやるしかない。それ以上のミサイルについては軍事、防衛政策として考えるしかない。


【聞き手・構成 江藤貴紀】


 

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