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後藤健二さん人質事件 「日本政府がヨルダンをイスラム国との交渉チャンネルに選んだのは誤りだ」元静岡県立大准教授 宮田律氏 外国特派員協会で会見

2015年1月28日16時57分
カテゴリ:外信

後藤健二さん人質事件 「日本政府がヨルダンをイスラム国との交渉チャンネルに選んだのは誤りだ」元静岡県立大准教授 宮田律氏 外国特派員協会で会見



昨年から生じていたISIS、いわゆるイスラム国による湯川春菜氏と後藤健二氏の拘束事件ーーー今月になってイスラム国が両名の殺害予告と身代金要求を行いその後に湯川氏の殺害が確認された。そして現在、ジャーナリストの後藤健二氏についても、ヨルダンで拘束されている女性テロリストとの交換などを飲まなければ殺害すると予告をされている。この問題を受けて、イスラム研究を専門とする、元静岡県立大学准教授の宮田律氏(現代イスラム研究センター理事長)が外国特派員協会で急遽、講演を行った。イスラム国の勢力伸長の背景はどこにあり、そして今回の人質事件に日本政府はどう対応するべきだったのか、判断の難しいこれらの事態について、同氏の見解をお伝えする。


宮田律氏ーー簡単に今回の事件の印象と私の感想を申し上げます。私はイスラム諸国を多く、ほとんど回っているわけですが、その経験からはイスラム諸国の日本に対する感情は良かったわけです。日本という国は第二次世界大戦でアメリカに敗れて、それから19年後に東京オリンピックを開いたようにめざましい復興を遂げました。それに比べてアフガニスタンやイラクは依然、苦しんでいます。そのため、そういった復興に対する畏敬の念のようなものがある訳です。


それに第二次世界大戦後の日本とイスラム諸国の関わりについては、日本は東南アジアなどには軍事介入に関わったことがありますが、中東のアラブ諸国には軍事的に関わったことがなかったわけです。経済的にも日本が発展を遂げたことと、そしてあちらで使われている自動車、家電、カメラも日本のものが多くてそういうテクノロジーもアラブイスラム世界の人からは尊敬を持って受け入れられてきたと思います。


だけど、どうもあの最近日本に対するイメージというのアラブイスラム世界の側から崩れています。一つ表現するならば、アラブイスラム世界というのは親日国が多いのですが、唯一の反日国はイスラム国だけかなという印象です。


今回の人質事件ですけど、これは世界の矛盾が凝縮するような形で現れているのではないかと思います。中東イスラム世界の地図を見ると、イラク戦争とアラブの春を経てイラクとシリアはずっと戦乱の状態にあるし、北アフリカを見ても紛争のマップは拡がりつつあります。


これは、やはり現状や将来に希望を持てない若者たちが増えていると言うことからこういう暴力的な集団が支持を得て勢力を拡大しているのかなという印象です。勿論暴力という者が許されるわけではないのですが中東イスラム世界の現状を考えれば中東イスラム世界の現状を考えれば、こういう武装集団に入ることによってのみ生活手段を得ることが出来る若者が居ると言うことだと思います。


こういう暴力的な集団の活動を抑制するには、私があらためて言うことではありませんが、政治経済の安定を図ることが、暴力的に制圧するよりも先に考えることだと思っております。アメリカのブッシュ政権の2001年の911事件を経て、テロとの戦いを言い出しました。ですがアフガニスタンはともかく、イラク戦争には正当な根拠がありませんでした。そしてアフガニスタンにも未だ米軍は居て、イラクでもまた武力介入をしています。そして、911の時よりもテロの起きる件数は増えているわけです。


現在アメリカのオバマ政権は、イスラム国の根絶には3年かかると行っていますが、これも明確な根拠があるわけではありません。それにオバマ政権の任期は3年ほどはないので、そのイスラム国の根絶に3年かけるというのは無責任な印象を私は受けます。


今の進展の中で日本の安倍首相はこの前中東を訪れて、イスラム国と闘う国々あるいは周辺の国々におよそ二億ドルを支払うという約束をしました。私はそれは良いことだと思いますが、この日本の支援の中で忘れられている方々が居ると思います。それはイスラム国の支配下にあるところの、住民の方々です。


中東支援と言うことを考えたら、イスラム国の支配地域に置かれている人たちの支援は大変難しいことですが、何らかの支援を与えないとイスラム国の支配下にある人たちは、これからもイスラム国を支持するのではないでしょうか。


色んなチャンネルを使って、忘れられたつまりイスラム国の支配下の人たちの支援を考えていった方がいいです。そしてあまり考えたくないのですがイスラム国にもメンツがあると思います。そのイスラム国のメンツを考えても、日本がイスラム国に貢献するような、その住民たちを支援するというのは、例えば衣料品の供与とか提供というのは、日本がイスラム国の支配下の人たちにやってもそんなに大きな批判は受けないという気がします。


長期的にはああいった暴力的な集団の勢いは止めなければいけないと思うのですが、それを支持する人たちが居る人たちが居ると言うことを日本を初めとした国際社会は忘れてはいけないと思います。


イスラム国と住民たちの分断を図ると言うことが、長期的にはイスラム国の勢力を弱めます。そのためにはイラク政府が重要になります。イラク政府が、北部のスンニ派勢力の福利について考慮をあまりに払わなかったために、これまでイスラム国を支持しているスンニ派、旧フセイン政権の勢力がイスラム国の支持に加わっていると思うのです。


最後に一言ですが、これから私は日本国民として中東イスラム世界で信頼され続ける日本であり続けて欲しいと思います。彼らの信頼、期待に応えるような政策を日本政府にはとって欲しいと思います。歴史的には日本とイスラムの関わりは深くないです。日本もイスラムの理解を深めて、何らかの支援を政府をはじめとした日本人が行って欲しいと思います。


 

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