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東大の学生バイト斡旋業務、人材紹介業者1社が入札を経ずにタダで独占契約 陰に大量の天下り

2014年7月29日11時33分

東大の学生バイト斡旋業務、人材紹介業者1社が入札を経ずにタダで独占契約 陰に大量の天下り

東京大学、東京工業大学などの国立大学や早稲田、東京理科大学などの私大を含む226の学校の学生アルバイト斡旋を大学などから請け負っている人材紹介業「学生アルバイトネットワーク」が、一般競争入札も随意契約も経ずに東京大学から無料で独占的にアルバイト斡旋契約を結んでいることが分かった。会計法の定めに反しているおそれがある。



同社は求人を出す側から手数料を徴収して利益を得ており、その分、銘柄大学の学生という「無形資産」をタダで独占使用できている仕組みだ。本紙が東京大学に確認したところ、この会社を通さないと、今は東大で学生アルバイト斡旋はしてくれないという。



(東大へ情報公開請求して入手した、A4相当でわずか6枚にしかならない重要な契約書の一部。甲とは東京大学で乙とは学生アルバイトネットワークを運営する株式会社ナジック・アイ・サポート側である。)


ならば直接に学生から手数料を取らないとしても、企業の総人件費の中から「中抜き」することで利ザヤをが得られてその反動で働く側の賃金にしわ寄せが行く。自主的に登録する形の労働者派遣ならともかく、なぜ学生が厚生部を利用するために、外部事業者を強制的に使用させられることになるのか。さらに自分の個人情報も同社に無料で差し出すことになるが、東大、早大、その他の大学生らの個人情報とアルバイト履歴情報などはずいぶんと美味しいビッグデータにもなるだろう。



(株式会社ナジック・アイ・サポート登記簿より。これとウェブサイトによれば同社は職業有料紹介事業と一般労働者派遣事業を運営する。)


さらにこのサイトでは同社の斡旋する、新卒就職向けの就職紹介サービスへの紹介も勧誘している。もちろん、これは同社がそれから行う職業紹介のビジネスに利用できる貴重な財産であるが、実はデータベースは以下の通りアルバイト登録のものと同様である。なので登録がカンタンなことが同社の売りだが、つまりこれは学生を青田刈り出来る立場の同社にとって、新卒学生の人材紹介や卒業後の派遣ビジネスへも集客がとても有利ということだ。


そして東京大学に関して確認したところ、かつて(筆者が覚えている限り少なくとも2003年まで)あった、一般家庭から大学の事務に頼んで、家庭教師の募集をかけたりするような牧歌的なことはもはや一切受け付けていない。そして同社のウェブサイトによると、事業でなければ同社を通した募集が出来ないので、一般家庭は同社を通したとしても、大学生を募集できないことになる(まるで、弱いものいじめの「教育」をされているようだ。)。




(企業向け、掲載プラン一覧表。リクナビなどに比べれば安い部類かもしれないが、その分はデータの価値で穴埋めしているのだろうか。)


この契約の結果、(1)同社が多大な利潤を得て(2)学生のアルバイト賃金と企業の採用コストはその分、同社の利潤のしわ寄せで打撃を受け(3)一般家庭からのバイト依頼などは不可能になる。もっともたしかに大学側は、「ほんの少しだけ」アルバイト斡旋の手間と人件費が節約されるかもしれない。しかしながら、このような美味しいビジネスならば大学に対して手数料を支払ってでもやりたいという企業がいくらでもあるはずであるが一般競争入札も通していない。




なお、東京大学が情報公開請求に対して開示した資料によれば1年間におよそ1800人の東大生が登録したとあるので、同社にとっては濡れ手に粟のビジネスである。

(10月10日追記)




加えて気になるのが、「制限職種」という欄である。例えば審査の際に「家庭教師派遣」への登録などは教育的配慮から、掲載できない場合があるとして同業者の締め出しを行っている。一方で、同社が一般労働者派遣事業を行っており、プライバシーポリシー.8に定める第三者提供を用いるなどすればどうにでも、自社の将来の派遣事業への個人データ収集は可能な仕組みである。また「土木や水道工事の現場作業」もアウトらしいが、そんなに有害な仕事なのだろうか。


ところでなぜ、一般競争入札(国立大学法人もその対象である。)などを経ずにこの「美味しい案件」を得ることができたのか。その方法はなかなか大胆で「大学側が自主的に、同ネットワークへの加入を申し込む」という契約形式にしているのだ。





(ナジックアイサポートと契約する際の「①稟議書②契約書③随意契約とした理由が分かる文書④一般競争入札に付していた場合の入札条件」について知ることが出来る文書を請求して出てきた、東大内部での稟議書。「申し込み」を自主的にするとあり、これで通常は国立大学が経る必要のある一般競争入札を内部で回避したと思われる。たしかに構内の食堂の土地代のような分かり易い財産ではないものの、アルバイト斡旋独占はやはり非常に貴重な財産ではないか。また、随意契約の手続きをとった文書もないので、その要件も回避していると中で決めたようだ。)


10月10日追記 東京大学に対しては、以下の通り、ナジック・アイ・サポート社の後にリクルート社も売り込みをかけている。リクルートがこの業務を受託できなかった理由は不明だが、もしもナジック社に比べて不利な条件を突きつけられたりしていたら、行政法上の一般原則である平等原則違反になる(なおリクルート出身の副理事の伝手で、リクルートも東大に営業をかけているあたり、ナジック社とどっちもどっちで酷いなと感じる。東大がろくでもないのは言うまでもない)。


つまり費用を徴収しないで、「学生をタダ売り」して、会社にいろんな権利を与えるという謎な契約だ(タダで契約してるので、東大内では、結果的に学生の福利厚生に回せる予算は減るだろう)。そしてまた、同社は学生をアルバイトに雇いたいという会社の「審査」までも行う。つまり同社に嫌われたら大学経由でのアルバイト募集ができなくなる仕組みだ。



(学生アルバイト情報ネットワークウェブサイト・企業向けより)


なお学生アルバイト情報ネットワークの運営は以下の通り一般財団法人学生サポートセンターが株式会社ナジック・アイ・サポートを監督して行うとされているが、どちらも前者の代表理事と後者の代表取締役社長が同一人物であるので、どれだけ実効性があるのか不明である。


はてでは、この財団法人に何の意味があるのかというとむしろ、大学へ食い込む効果と思われる。一般財団法人学生サポートセンターの役員に、大量の元文部科学官僚らを天下りで受け入れたからである。なお他にもここには、国立大学の教授や元学長、私立からも早稲田大学総長などの幹部が天下りして、「文部科学利権」の中で学生のバイトがおいしい魚礁になっている。以下、ベタすぎて書いていて飽いてくるが詳述する。


例えば同財団の評議員である小林敬治氏は旧文部省で教育助成局長をつとめた人物だが、この教育助成局というのはその名の通り教育機関に金銭援助を施すことを当時の所掌事務に含んでいた(旧文部省組織令・39条1項)。(もっとも担当は高校までに限られるが、東大を含む多くの国立・私立の大学法人は附属高校を設置しているので実質的に元々、学校に対する国からの金庫番をつとめていたことになる。)次に、早田憲治氏は文部省で、学術国際局研究機関課長などをつとめたあと九州大学事務局長を経て、いまは社団法人・国立大学協会常務理事事務局長の職にある。(さすがにこういうことをやって学生のバイト代から生活費や娯楽費をピンハネをするのは、教育行政をやっていた元官僚たちとして恥ずかしくないのだろうか。)また、大塚和子氏は内閣官房出身で、総理大臣秘書官などとして36年間勤務していた人物で、国政の陰の功労者だったが今では表だったフィクサー職になっている。


理事としては木村孟氏がおり、彼は現在の文部科学省・顧問で、東京工業大学の元学長かつ名誉教授をつとめる。この東工大もまた同社のお得意様である(肩書きからして、理系ではとても偉い人で影響力と声も大きいのだろう。)。対照的に、早田氏がかつて在籍していた九大等はこの仲介ビジネスと契約していない。内部での子細は分からないが一種のモラルを感じさせてくれる。


なお、私立大学の理事長や総長なども存在しているが私立学校法や、その下で定められた「寄付行為」(ふつうの企業でいう定款にほぼ相当)その他で運営や利益相反行為についての定めがあり、就任自体が妥当かどうか疑問を感じる。現役であれ元であれ、重役が天下っている団体からの契約の要請にはなかなか嫌とは言いづらいからだ。


同財団の評議員である寺島実郎氏は多摩大学の学長とこの役職を兼務しており、さらに多摩大学はこの「学生アルバイト情報ネットワーク」に入り同財団と同社の資金源となっている。同大学の「寄付行為」第22条では「予算外の新たな権利の放棄又は義務の負担」を同大学の評議委員会審議事項と定めているが、これは適切に審議がなされただろうか。同氏は天下国家を論じる大量の著作があるが(よく一人でこれだけ書けるなと感じる)、国のあり方についての実際の理想はよく分からない。

他にも工藤 智規氏が東京電機大学の監事と同財団の評議員を兼務しているが、もちろんのごとく東京電機大学は「学生アルバイトネットワーク」に加盟している。(果たしてこの状態で工藤氏は適切に監事の職務を全うできるだろうか怪しい。)同様に同財団の理事として、奥島 孝康・早稲田大学名誉顧問(元・総長)や小浦 延幸・東京理科大学教授(前・理事長)がいるが、早稲田大学や、東京理科大学も同社のサービスに加盟していてしっかりお得意様になっている。


本紙の理解では、アルバイトがほしい側にとっても学生側にとってもメリットは少ないのだから、同社を経ずかつてのように厚生部が直接、アルバイトの仲介をするほうがまともなように思える。(厚生部の職員とはそういう業務のために存在して、給料をもらっているはずである。)あるいは、少なくとも国立・公立の大学に関しては、もし他の会社から同種の契約斡旋を求められることがあればそれに応じないと、平等性・公平性を失することになり、行政法上の平等原則違反になる余地がある。


いずれにせよ、学生のうちから「派遣」や「人材紹介」をしている会社を経ないと働けない状況をスリ込まれるのは気持ち悪い。事務方や文部科学省も含めた日本の大学全体の教育姿勢に疑問を感じる*





(一般財団法人学生サポートセンターの役員一覧。そうそうたる肩書きの、もう十分に稼いだんじゃないですかといいたくなる方々が名を連ねている。)


更に実は、もう一つ同社が大学へ食い込めた経緯がある。北澤社長はもともと学生向けマンションの賃貸事業を「学生情報センター」という社名で手がけていたが、このときに大学職員へ接待攻勢をかけていたのだ。この会社で(毎年春に)「学校関係者と共に一流ホテルで盛大なパーティーを開催する。このパーティーに膨大なコストをかけている。」からとはっきり紹介されている(ちなみにこの記事によれば、それは「コストをかけて社会貢献することも厭わない」ことの現れだそうである。)。


「やり手」だとは思うが商道徳としてどうなのか。他の大学も含めた契約内容や、年次ごとの斡旋状況などについては調査中であるが、文部科学省ないし会計検査院において、東京大学以外の国立大学法人についても、監査・検査があってしかるべきと思われる。また私学でも文科省の監査・指導となり得る。東大は入札外で、対価を得ずに権利を付与する契約を結んでおり、「売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合に・・・公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない」という会計法29条の3第1項の定めに反しているおそれがあるからである。


では、国の監督を待たずに、同社との契約の是非を問題にする余地はないのだろうか。筆者の見たところ、首都大学東京がこの会社と契約しているためその契約が適法かどうかについて住民監査請求をするルートがあるように思われる。というのは、そして首都大学はは地方自治体の運営する公立大学法人のため、東京都民による住民監査請求で行為が地方自治法にてらして違法かどうかを直接に争う対象になるからである。(この件を離れた一般論としてだが、東京都自体でなくて、首都大学東京の行為についても、住民監査請求は可能である。本日、東京都監査事務局に確認済み)。これは、とくに多数の署名などなくても(時間と意欲があれば)一人で行える。




(首都大学東京のウェブサイトによれば、学生アルバイト情報ネットワークにもっぱらバイト斡旋を業務委託している。そして、同社と首都大学内部のコンピュータネットワークには、特別な接続が確立されているようである。)**


*別に大学を経ずに自力で探すことが禁止されているわけではない。ただ、昔ならば大学の構内にバイト募集の張り紙がしてあってそこから探せたのが、今なら職員さんから「バイトがしたいならこのサイトに登録してくださいね」と言われるだけである。


**8月30日・追記「首都大学東京」に情報公開請求したところ、それなりの合理性がある理由を付して学生アルバイト情報ネットワークに加盟しており、また従来通りに、家庭からの家庭教師直接募集も受け付けているため、違法とまで言える根拠は現時点では薄弱である。


10月10日追記:首都大学東京においては、ナジックアイサポート社と並行して従来通りの学生かを通したアルバイト斡旋を行っており、なおかつ、同社以外の業者からのアルバイト斡旋の誘いは受けていないと言うことが情報公開請求で判明した。この分なら、全く違法性はないし学生向け福利厚生の一環として同大学の事務方がとてもよい仕事をしておられるというべきである。


【編集長 江藤貴紀】


 

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