2ちゃんねるの実質運営企業と警察に認定されている未来検索ブラジル社が、取締役西村博之氏に関する麻薬取締法違反などの容疑で警察から受けた捜査について違法だったなどとして損害賠償を警察に求めていた事件で、その裁判の記録を閲覧して書かれた5月7日付けのエコーニュース記事で自社従業員のプライバシーが害されていたなどとして、特別に裁判記録の一部を公開停止するように東京地方裁判所へ申立をしていたことが、分かった。
この裁判の記録を9月19日にもう一度、東京地方裁判所で本紙のスタッフが閲覧したところ、ブラジルの代理人、光伸法律事務所(こうしんほうりつじむしょ)の山下幸夫弁護士が、ブラジル社長の深水英一郎氏の意見書とともに、エコーニュースの記事をプリントアウトして裁判所へ要請していた記録が見つかって、判明したもの。
閲覧制限の申立がかかった部分は、社員の職務内容と氏名や関係企業との送金関係などが記された部分。ブラジルの深水社長が出した書面によれば、この裁判資料を閲覧した者は情報を扱う配慮に欠き、ブラジル社員の氏名などを記事としてインターネットに掲載して流布しているため、個人情報や営業秘密が漏洩し得ると主張されている。
(5月7日付け記事のうち、閲覧制限申立のあった箇所をまとめていた部分)
そして末尾に「インターネットに記事を書いた方は、他の人にも閲覧を勧める書き方をしていることもありますので、今後このようなことがないように、是非とも閲覧制限をしていただくよう、ご配慮のほどよろしくお願いいたします。」と裁判所への依頼が記載されていた。
しかし、この記事の執筆翌日に2ちゃんねるに立ったスレッドを経由してひろゆき氏が管理する2ch.scと、未来検索ブラジルがとりまとめる「まとめブログ」で、まさにこの情報と社員の個人情報が自爆的に拡散されるという状況が発見された。(9月20日追記)
なお、筆者の見たところ閲覧制限のかかった箇所で重要な部分は全てすでに、訴訟記録を閲覧してとったメモを元に記事の中で書かれておりいまさら閲覧を制限しても余り意味が無いと思われる(閲覧制限の申立をやるならもう少し早くやるべきであった)。
(裁判所ホームページでも、閲覧制限が遅れてその間に情報が公開されてしまうと、申立が認められなくなることがあるから注意するようにと書いてくれている。)
「たられば」の話になってしまうのだが、匿名掲示板だったはずの2ちゃんねる有料会員のクレカ番号や住所と書き込み内容などの各種個人情報を紐付けしたうえで保管したり、そのデータが数万人単位で漏洩したのに責任を負わず賠償もしなかったり(●流出事件)、実は書き込みのデータがホットリンクやガーラに売り払われたりしていなければ、記事を書いた人間も人情として、職員の個人名などはわざわざ記事につけなかっただろう。
なおボランティアで運営されている個人掲示板であったはずの2ちゃんねるに関係して、どうして会社の営業秘密が出てくる余地があるのかというのも多くの人が突っ込みを入れたいポイントである。
それにニュースサイトのはずの「ガジェット通信」も運営していた未来検索ブラジルが、いかにもニュースで取材されそうな内容を出しっ放しにしていて閲覧制限の申立をかけるのが遅れるというのは、これまで真面目に取材をやった経験があるならあり得ないのではないかとか、言いたいことがあるならば(裁判と平行してでも)自社のニュースサイトで何か言ってもいいのではないかなど、いろいろ論点は出てくると思われる。
(ガジェット通信が報道機関であることを強調する、ブラジル社深水社長のコメント。なおインターネット報道協会とかいうのはニコニコ動画や神保氏などが加入しているそうだが、入って何かいいことがあるのかは不明。弊社は入っていない)
この訴訟は、次回の開廷が千代田区霞が関の東京地方裁判所で、10月16日午後1時30分から712号法廷となる予定である。最後に訴訟記録の閲覧制限の申立自体を次ページに付記する。
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