現在、民事訴訟の記録(証拠など)については終局してから、原審の係属した裁判所に「5年間だけ保管」されて、それを過ぎたものは判決の原本以外は廃棄されることになっています。
では何かの理由(例えば、公文書として貴重なものなどが含まれているので残しておきたい)ときにこの廃棄を免れる方法があるのでしょうか?
自分が「2ちゃんねる」関係の過去の裁判について調べて気になったこともあり、この部分について東京地方裁判所・本庁の書記官さんに昨日うかがってみました。すると、(あまりそれを望む当事者はいないようで)「少々、記録を保存する係りに確認する必要があるので時間がかかる」ということでしたが本日、ご回答をいただきました。
すると東京地裁では「廃棄留保要望書」という書式の書類(HP等では公開されていない)があるのでそれを係属した部に、取りにうかがうかFAXしていただいて印鑑だけ押して提出すれば終局してからの「保存期間が10年になる」ということでした。原告か被告が行うことが出来て、特別な理由を付ける必要や料金はなく、また申出が却下されることもないようです(ただし裁判所〜例えば他の地裁によって運用が違う可能性もあります。)。ですが永久保存の要望は出来ないです。
この疑問についてはウェブ上で、「要望の上申が出来る」という情報はあったのですがそのための要件があるのかや、期間がどれだけ延びるのかという情報がなかったのでいちおう記事にしておきます。
まあ、そんなに大事なものならば当事者か代理人で保管しておけば良いという考え方もあるのですが寿命が来たり一般へは連絡先を公開していなかったりすることがあるので、その裁判について何かを調べたい第三者(学者さんやジャーナリストなど)へ便利なように制度を使うというのもありだと思われます。
もっともこの点、永年保存が望ましい場合もあると思うので、より長い期間の延長ができるという制度設計もあるという考え方が出来ます。(紙だと場所をとるので保管場所に限界はあるだろうけれど、システマティックに電子化するなどすれば記録を残すコストは削減できます。)。学術研究の観点からは「公文書等の管理に関する法律」第2条をより具体化定める「公文書等の管理に関する法律施行令」を改正する処置での対処も検討されてよいかもしれません。
ただしコストがどれくらいかかるのかは不明で、いわゆる「忘れられる権利」の考え方とも相性はおそらく悪いです。何しろ争いごとがあったという過去の記録なので。
余り大きい「ニュース」というわけではない地味な話ですが、この情報も残しておいた方がよいし、それに一部の人には長くまで(細々とだけど)見てもらえると考えられるので記事にしました。これを知りたいという需要は1万人に1人くらいしかないかもしれませんが、それでも日本人全体なら1万3000人くらいの潜在的需要はあるから、という判断です。
【江藤貴紀】
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