大手動画サイトのYouTubeやニコニコ動画には、ゲームや音楽その他のコンテンツそのものや、それをユーザのプレイしたもの等がアップロードされていることは知られている。だが、果たして著作権法違反の問題は生じないのだろうかという疑問が生じてくる。そこでこれらのサイトについて調べてみたところ、ニコニコ動画は投稿者でなく権利元の法人と広告収入を配分するなどしてビジネスパートナーとなっていることが分かった。
YouTube社の主張としては(1)サーバが米国にあるので米国法が適用され(2)その範囲では合法という言い分である旨の報道がされている。またカドカワのように著作権者が直接契約を結んで公認の動画を投稿する場合もある。
しかしニコニコ動画の場合はどうなっているのか。サーバの所在等については不明だったものの、同社は、実は著作権を保有している企業との間で「ライツコントロールプログラム」と呼ばれる特殊な契約を法人だけに対して提供していた。
これを読む限り、この契約パートナーには、自社の動画について2つの選択肢があることがわかる。まず、ニコニコ動画から報告されて自社コンテンツを含む動画が(1)自社に都合のいい内容、たとえば面白そうにゲームをやっているような内容であるような動画はそのまま残存させて、ドワンゴ社と広告料を配分しあう(2)反対に、コンテンツの内容を批判する(例えば、昭和のアニメに比べて最近の作品は作画の質が落ちたのではないかと、比較しながら主張するような)都合の悪い動画は消去する選択肢もとれる。
要は、ニコニコ動画に投稿されている企業のコンテンツがらみの動画は、著作権社の了承が入っており、ニコニコ動画は彼らとアフィリエイト広告を山分けするとともに、PRも行なうという「広告代理店業」なのだ。日本版YouTubeとして、角川会長も認めるニコニコ動画において「削除」を提供する場合もあれば動画を掲載し続けて広告収入を山分けという場合もあるということだ。しかしYouTubeとの違いがある。法人と個人に対する区別だ。ニコニコ動画がプログラムの契約対象として示しているのは「法人」であり、個人レベルのアーティストや作品はこの著作権保護契約のパートナーとならない。
(ニコニコ動画を「エヴァンゲリヲン」で検索して上位に来た「好ましい」コンテンツの例。)
以上だけからは、新作アニメやゲーム等についての動画や実況中継で、ニコニコ動画のドワンゴ社が主体となって「積極的に」宣伝をしていたかどうかまでは断定できないが、契約を結んだアニメメーカーやゲーム会社の「了承」は受けており、その広告収入は折半する関係が出来上がっていたと思われる。
なお、ニコニコ動画の投稿監視サービスを請け負うのは、2ちゃんねる元管理人の西村博之氏が取締役を務める「未来検索ブラジル」社であることがネットユーザの調べにより分かっている。当然に監視は削除の前段階として存在するから、この2つの作業は密接に関係する。また、2ちゃんねるの中から情報を抜粋・編集した「まとめブログ」の公式な受け皿として、「大手メディアプラン」を提供するかけはしになっているのも、ニコニコ動画を運営するドワンゴ社のウェブページである。
(契約面でまとめサイトの取り仕切りをするのはドワンゴ社であるが、削除サービスについてはやはり「未来検索ブラジル」が担当する。)
つまり文章と動画の両方において、ニコニコ動画の「ドワンゴ社」と、ひろゆき氏らの「未来検索ブラジル社」および「東京プラス社」は肩を組んで、クライアントへ不都合な情報の削除サービスを提供して、逆に好都合な内容が検索して上位に入るようにインターネット上の情報を監察していたことになる。(なお別記事のとおり、2ちゃんねるへは有償の削除サービスが存在していたことなどが4月2日付、ホットリンク内山社長のFBへの投稿などを契機に判明している。)
もちろん、著作権者は無断で権利を使用されたコンテンツの削除を要求できるのは、法律上は当然だ。しかし一方で「都合のいい」作品ならば投稿先と契約を結んで黙認・広告収入を折半できる構図はあまり知られていなかったと思われる。(一生懸命に動画を投稿しているニコニコ動画の有料会員はそのことを知っていたのだろうか、疑問である)なお、版権元(多くは大手のメディア会社である)に「都合のいい、悪い」で動画が削除できる仕組みになっていたとすると、作品についてユーザ側の不満を含むような場合には動画が流通しないことに容易になり得て、「フェアな意見交換のプラットフォーム」とは言えないだろう。
日本のインターネット社会は、投稿される内容の荒唐無稽な様子からネット上で一見、自由な、その代わり無法な地帯と思われていた。しかし、ニコニコ動画と2ちゃんねるという、表向きはユーザ主体の2大サイトが実はスポンサーのクライアントによって、投稿内容を監視・コントロールされたサービスであった事実は知られてよい。またそれを前提にしないと、今後の「ネット世論」、利用者のプライバシーなどの問題は焦点をつかみ損なうことになる。
余談であるが、実効的に日本国内のドワンゴ社と契約締結する資源と能力のない海外の版権元は、同プログラムで保護されないまま著作物を投稿されるはずである。彼らが日本語でクレームをつけてくることも余り無さそうなので、その分についての広告収入は、海外にいる本来の著作権者にはわたらず、ドワンゴ社の手に入ることになるように、同社の公開資料を読む限りは思える。国内であっても生主などの個人であればプログラムの対象とならないことから、少なくとも利益配分に関しては、ニコニコ超会議のコピーフレーズ「みんなが主役。」は当てはまらず、日本の会社が主役の仕組みである。
(ドワンゴ社・コーポレートサイトの事業内容より)
4月30日追記:ドワンゴ社はニコニコ動画について「あらゆる個人、団体、企業に対し公平に情報発信の場を提供している」(民主党・興石幹事長が2012年に極端に偏向した動画サイトと表現したことに対する抗議文)と主張している。
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