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【書評】「ヌードルの文化史」フランス料理から、ベトナムのフォー屋台まで

2013年10月19日17時54分

【書評】「ヌードルの文化史」フランス料理から、ベトナムのフォー屋台まで

 基本的にだけど、麺は世界中のとっても広いエリアで日常食として食べられる〜その分、差別化がしにくい食べ物です。これは味が悪いからじゃなくて、入手と調理が容易だからです。つまり、しめじやえのき等に比べて松茸が珍重されるのと同じような理由ですね。(個人的には前者の方が好きなんだけど)


 じゃあ普通の食事に付加価値を付けるにはどうしたらいいでしょう・・・例えば庶民的と思われていたドイツのソーセージが「高級な食材にレベルアップするにはそれまでの粗野で素朴であることを否定して、例外的な高品質を有することが要求され」ました。それにパスタも、単なるトマトソースじゃなくてトリュフとかの高級食材を混ぜ合わせて、スパゲッティの乾麺じゃなくてあえて手打ちのニョッキにすることで「こだわり」の食品になります。(ちなみにもとは長らく、手打ちのほうが一般家庭では当たり前で、乾麺はナポリ発祥の保存食として徐々に広がっていったらしいです!)


 たしかに、日本でもそのとおりですね。そばやうどんの食べログ上位に来ているお店をみてみると、粉に拘ったとかあえて機械じゃなくて手打ちにしてるとかそれまでとちがった「こだわり」が強調されてることが多いです。(僕もそれが好きで追いかけている訳ですが)それに焼酎も(昔は安酒として軽蔑されていて、うちの祖母なんかはおじいちゃんが焼酎を飲むと「そんなみっともないものを飲んで」と怒っていたものです。かわいそうに・・・)特殊なブランド、魔王やら森伊蔵とか山猫とかが飲みやすさやガツン系の香りやらでそれまでと違うんだ!ってPRして少なくとも末端レベルで単価をつり上げることに成功しました。


 それに、他の知見も面白いです。現在のフランス料理がフランス革命後〜それまでの宮廷料理人と、そのころ出てきたブルジョワジー(今で言えば「ニューリッチ」じゃないかなと著者は言います)「情報誌」によって作られたとかなかなか首をうならされます。


 いっぽうで彼は単なる「インテリさん」ではありません。中国の西安にある手打ち麺の庶民店に行ってみたり(奥さんは中国人だそうです)、旧ソ連のタジキスタンで内戦が勃発したときに、西側諸国から最初に駆けつけたジャーナリストで、それまでもモスクワのサウナに行ったりしてて、とても行動力が高いです。


 ちなみに今は「南ドイツ新聞」の東京特派員で、2007年に来日していますがそれまではソ連と東欧の研究者(を経てジャーナリスト)だったそうです。かなりインテリジェンスも高そうです。実際、日本史近代史にも(本書ではあまり出てきませんが)普通の全国紙やNHKあたりの記者よりよほど詳しいですよ。


 このヌードルの文化史は手に取りやすいし中身もあるのでぜひ読んでください。普通の日本人が書いた歴史書とかグルメ本の解説よりはるかに①面白いし②中身も正確で③独自の考察がありますから。


 

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