9月1日、外国特派員協会で古屋圭司国家公安委員長(兼拉致問題担当相)が北朝鮮による拉致問題に関して会見を行った。この中で古屋氏は安倍総理の拉致問題解決への熱意と、現政権が拉致問題の解決に強く取り組んでいることを説明。
そして日本政府が確実だと認定している拉致の被害者は18人だったが、「北朝鮮による拉致の可能性が排除されない事案」として、860人を昨年春に安倍政権が公表したことを強調した。
会見後の質疑応答では外国人記者が、北朝鮮が核開発とミサイル研究に力を入れていることを指摘した上で、「860人という、拉致の可能性がある日本人のなかに、原子力の専門家はいたのか」という極めて直接的な質問を出した。(注1)この質問に古屋氏は「インテリジェンスの問題である」ことを理由に回答不能と応答。(注2)
また弊紙の記者からは、公表が昨年まで遅れた理由について「(1)政府として事案を認識していなかったのか、(2)それとも外交カードに使うための配慮などが働いてあえて公表していなかったのか、(3)また例えば第一次安倍内閣のときに政府が公表しなかったのはなぜかと」の質問がなされた。
しかしこれに対して古屋委員長は、民主党政権時代の3年半については事情を存じ上げない。また、第一次安倍内閣の際には自民党を離党していたため、やはり事情が分からない」とのみ返答。個人的な立場についての言及にとどまり、それまでの経緯や省庁で問題を担当した官僚からの申し送りについては触れず、会見を締めくくった。
以上から得られる推論としては、(1)拉致の対象者に原子力の技術者その他、国家機密を有する人間が存在した可能性がある(自衛官、警察官なども含まれる)ことと(2)拉致の事実をいきなり知ったとは考えにくいので、以前から政府としては把握していたが、にも関わらずそれを否定したのは「外交カード」と答えると「拉致被害者を外交の道具に使うのか」と世論の反発を浴びるを避けるためか(3)または拉致の実数を秘密の情報源から入手していたので、拉致の事実を知っていたこと自体を隠したかったが何らかの理由で状況が変わったといったところである。
(注1)*おそらく、日本と北朝鮮、両国の核開発計画についての情報を得ることが狙いの質問である。
(注2)**いないことが確認できれば否定するであろうし、存在を把握していなければ、「知らない」と回答するのが通常であると思われる。また「インテリジェンスの問題」という回答からは、少なくともある程度の子細が官僚から古屋氏まであがってきていることがわかる。
【Photo: Natsumi AWANO】
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