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【書評】トップシークレット・アメリカ〜「機密指定」を隠れ蓑にした防衛族の利権あさり

2013年12月9日04時04分

【書評】トップシークレット・アメリカ〜「機密指定」を隠れ蓑にした防衛族の利権あさり

9.11後のアメリカで莫大に増加した防衛機密とその副作用を描いた本。いま日本でわたしたちが注目すべきは、防衛予算の歯止めの利かない増大と、その監査が困難になっているという部分です。すさまじく利潤率の高い仕事になっているそうで、その理由は「機密」であるために議会の財政監査が困難な点。


日本でも「秘密保全法」が制定されることになりましたが、アメリカと同様に機密指定を理由に財政監査ができなくなるおそれというのは今後に心配していくべき点だと思います。(いまの自民党で、重役にある人は石破幹事長を初めとしてタカ派と防衛族が多い様に感じますが、偶然でしょうか。不人気な秘密保全法をがんばって成立させた背景に建前の「国防」やよくいわれる「隠蔽」ではなく「利権」も考えてみるべきです(「軍靴の足音」の危険ばかり言っているのは思考停止ですよね。福島の教訓の一つに「秘密主義と結びついた利権」があったとおもいます)。


また、今年、スノーデン氏の内部告発で明らかになったアメリカのPRISMなどに代表される通信傍受と国民監視の世界的な流れについても、その背景にあるという考え方もあります。これの間接的な論拠の一つとして、日本と同じくアメリカの同盟国であるオーストラリアの警察当局が米国と同水準の電子メール情報収集プログラムの導入を決めたという報道を、論者の方はあげておられます。(12月12日追記)


現在の米国ではたとえば、「極秘」の文書を取り扱える資格を持っている人だけで85万人にもなるらしいです。ちなみにスノーデンさんもそのひとりでした。そしてそれが国家資格の一種として、給料にものすごく反映する様になっているそうです。


共著ですが、著者の一人は元アメリカ陸軍のインテリジェンス士官です。そのために取材が可能になったと思われる部分が多々あります。逆に言うとこの本のような内容は「元・関係者」でない限りなかなか書けない〜とりわけ外国人にとっては困難です。その部分で貴重。


ただ、この本の問題点はソースの出典がない部分。例えば機密指定解除された文書(WEBサイトなどで閲覧可能になっている)であっても、出典が出ていない。これで何が困るかと言うと(1)信頼性が欠けるというのもありますが(2)そのソースを元に自分で別内容を調査したいときに、参考に出来ないからです。


さらに、翻訳版では単語ごとの索引・インデックスがなくなっているせいで余計に使い勝手が悪くなっています。(ここをクリックしてAmazonでお試し読みできる原書と対照してください)


もちろんオフレコの取材源等は明かす必要はないけれど、そうでない部分までソースが付いていないのは致命的に使えないです。


一般に軍事関係の翻訳書では、原書にあった脚注がなくなっていたり、索引が消えたり、あと甚だしい場合には一章丸ごと抜け落ちたりします。原著者との取り決めでそうなるのでしょうか。もちろん、その「抜け落ちている部分」は外国人に使われると嫌な部分やセンシティブな部分だったりするのです。


なので逆に、原書の中で「何が重要か」を知りたいときには敢えて日本語の翻訳版と対照しながら、原書の見出しを参照して日本語版にない部分を探すという裏技があります。


なお、上述のオーストラリアにおけるちなみにこの電子メール情報収集プログラムではディープパケットインスペクション(DPI)が使われるそうですが、この技術の使用は、すでに日本では総務省が2010年時点でアッサリと認めています。しかしネット上での行動履歴を丸裸にして、通信の自由を冒しているんじゃないかという強い批判もある技術です。


(この記事は、従来の翻訳本に関する例を追記して、新たにできる「書評」欄に移します)


 

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