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「 利益を出すには仕入を減らすしか余地がない」 コンビニの理不尽契約を加盟店が語る

2014年8月8日03時49分
カテゴリ:国内

「 利益を出すには仕入を減らすしか余地がない」 コンビニの理不尽契約を加盟店が語る

もとは、住友銀行マン「土光敏夫さんと鈴木は、器が違う。正直者が馬鹿を見る世の中はダメだ」

三井氏はいま57才、最初は住友銀行に入行して最初は赤羽の支店に配属された(持論があって頭も切れる、古い表現だが「住友マン」という表現がとてもピッタリだ。)。


そのあと国際部門に行き海外ではロンドン支社に赴任した。それから本社に戻り、国際部門の監査を担当していたが、入行20年目ほどの1999年に自ら手を上げてインドネシア勤務を買って出た。


ちょうどジャカルタは暴動の直後で誰も行きたがらない場所だった(筆者も2002年に訪れたことがあるが、ピリピリした雰囲気の街だ。また大気汚染は世界でメキシコの次に悪いと言われていたらしいが、たぶん本当だろう。)。


当時の住友銀行はインドネシアで業績が余りに悪化していて大蔵省からは「業務をたため」といわれていた。


だが、インドネシアにはパナソニックにシャープ、NECといった日系企業が出て行っている。「なのに一番最初に銀行が尻尾を巻くなんて出来るわけないよ。それで経営を立て直しに行ったんだ」という。


話を聞いていると感じるのは、自分の力量に健全な自信があるタイプということだ。だから、ものもハッキリ言う「セブンイレブン本社の人間は、しっかりしてないし、イエスマンタイプだよ。」。店主は本社の人間に頭が上がらないというのが先入観———多分それがマジョリティだと今でも筆者は思う———だったが、典型的なタイプでは多分ない。


その後、金融システムを扱うスイス系の企業にヘッドハントされて入る(給料は住友より良かったという)が途中で別国籍の派閥とそりが合わなくなり始めた。そのころに語学力を買われてアメリカ系の銀行からもヘッドハントされ内定するが、業務に興味が持てず辞退したという。


そして8年前に、ネットでセブンイレブンのフランチャイズ募集を見つけて興味を持つ。定年もないし、「佐倉市表町店」を出して自分の力で切りもりしてやるのは魅力も思った。力量に、健全な自信————それまでの人生に裏打ちされた自信があったからだろう(今でもそのオーラはしっかりある。)。


「他のコンビニは検討されませんでしたか」と訊いてみたら、率直になかったという。「やるなら、リーディングカンパニーに決まってるじゃない」。それにセブンはリテイルとしてのシステムも斬新だった。


だが今は「あんな契約は詐欺だよ」と思う。「こっちは商売がしたかったんだ。ちゃんと裁量をもって、例えば商品の宅配だってやってみようとした。でも当時のシステムで禁止されていると言われて駄目だった。そんなの商売してる人間の立場じゃないから、本部の労働者だって思うんだ。」



「鈴木」(あえて呼び捨てのまま書いておく)は、周りの人間のことを考えてない、器じゃないという。「昔の経営者、例えば土光敏夫は立派だったよ。おかずはメザシともう一品の質素な生活で、自宅も上野の平屋住まい。消費税の引き上げにだって反対したから、政府は折れたんだ。それに比べて今の経団連連中は、誰もそんなことしないじゃないか。ズルくて、自分のことしか考えてない。」住友で若手のころの上司も立派だったと述べる。粗相はあっても一目おかれる人柄で、早死にしなければ、経団連会長になってておかしくない人だったと話してくれた。


ただ、三井氏は夢想家ではなく、真面目だがバランスのよいタイプだ。外資時代の話を聞いても(よい意味で)抜け目ないところもちゃんとある。

あと様子をうかがっているとリーダー肌で、学校の部活動でキャプテンに選ばれるような感じの人だ。


ーーーーー


フランチャイズ加盟の勧誘では、「働かなくても食っていける」と言われたが、そこには別にひかれなかった。ちゃんと「トップが表に出ていない店なんてたるむに決まってる。大企業だってトップが大事なんだから」と考えて、今の店も自分で出ている。


ただしレジシフトには入らないという。その代わり裏の事務室にはいっていき、例えばだが全部で3000品ある商品のうち2000品位を毎日、発注する業務を5時間くらいかけて考えながらやる(雑にやれば2時間で済むのだが、そうはしないという。)などする。考えなしに前線にとりあえず出るというのとは違う。


勤勉で士気も高くて視野も広いーーーーこんな人物でも「大きい企業がそういうことをしているなんて、思わない。あれは『詐欺』だ」という契約に、どれだけの人が用心して判断できるだろう。


そもそも本部と加盟店の利益がバッティングする余地が大きいのに、仕入れも見せられないのはおかしい。そういう仕組みはモラルハザードを招く。そして社会で資本を食いつぶして、いつか絶対に破綻する仕組みだと三井氏は考えている。「だから我々にはフランチャイズを規制する法律が必要だと思って、制定を目指してるんです。」(*注1)(**注2)


* フランチャイズに適用される法律には「中小小売業振興法と、独占禁止法のフランチャイズガイドラインがある」じゃないですか、と業界側の人間は反論するという。「それを言われると、特に詳しくない人はそうなんだと思ってしまう。だけど、いまの無茶を変える法律が必要です。」と三井氏は主張する。またこちらのリンクにある足立陽子氏の論文が2003年のものだが、コンサイスにまとまっている。


** なおアメリカには各州に州法があり規制がされているという。じつは米国では少なくとも1940年代からは、フランチャイズは本部のフランチャイザーが加盟者のフランチャイジーを食い物にする仕組みとして悪名が高かった(「マクドナルド―わが豊饒の人材」参照)。日本でも本部と加盟者の紛争が増えて、昭和48年には公正取引委員会が規制に乗り出しはじめたが、「フランチャイズ規制法」は制定されていないままである。ただし軽井沢ではコンビニエンスストアの営業時間に関する条例がある。


関連記事リンク セブン・イレブン 店主が外国特派員協会で講演「個人事業主の建前でも、実態は単なる本部の労働者だ」


【江藤貴紀】


 

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