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米国NSA、情報公開の請求者を内部で「ランク分け」 してリスト化 アメリカ情報公開法で判明

2015年3月17日07時29分

米国NSA、情報公開の請求者を内部で「ランク分け」 してリスト化 アメリカ情報公開法で判明



(6月7日に出されたFOIA Logの一部)


元NSAおよびCIAスタッフであるエドワード・スノーデン氏による2013年6月の暴露とガーディアン紙およびワシントンポスト紙などの報道により、PRISM(Microsoftやアップルなどの大手IT企業のサーバーから直接的にデータを傍受するプログラム)を初めとする国内外を対象とした大規模な盗聴がスキャンダルとなり現在もそのプログラムへの報道が続いているアメリカNSAに対する情報公開請求が、スノーデン事件の直後に激増したことが分かった。


また、NSAは開示請求者をリストまたはランク分けして、情報公開請求に対する扱いを変えていることも、開示された文章から判明した。これらは一種のクレーマーまたはスパイ扱いで冷淡な対応を取られていたとみられる。いっぽうでは一部の高名なアメリカ人学者が、NSAの情報公開担当官とディナーをともにするなど親密な関係を公然と築いており、開示請求者が誰かによってNSAは思い切り態度を変えているようである。


これらは、アメリカNSAに出された情報公開請求へ本紙が情報公開請求をかけて判明したもの。具体的には、スノーデン氏の暴露前の2013年4月と5月の二ヶ月で518件、一ヶ月当たりで259件だった請求が、スノーデン事件のあった6月から9月末まででは4686件となり月あた1159件で約4倍の伸びを見せた。

ただし、本紙に開示された情報公開請求記録(FOIA LOG)内容の中には「全部が個人情報」という理由で不開示になっている部分が2013年6月以降に増えており、おそらくは自分の個人情報についてNSAへ情報公開請求をした人が急増した物と思われる(ただし、アメリカ連邦法の下では個人の自分自身に関する情報は情報公開法(情報自由法とも言う)ではなくプライバシー法(日本における個人情報保護法に相当する)に基づいて請求することになっているので一種まちがったルートでの請求だが、つい請求したくなったり抗議の気持ちで情報公開請求をした人が居る可能性もある。



(NSAのホームページにある情報公開請求フォームのページ。PA(プライバシー法)に基づいて請求して下さいとある。ひょっとしてスノーデン事件後に情報公開請求が激増したのが原因で、この記述がなされたのかどうか調べようと思ったが、ホームページの過去の状態を保存するWEB ARCHIVEには2013年6月18日までのものしか記録されていなかったため、確認は出来なかった。)


そして、情報公開請求として出された請求のうち2013年6月から9月にかけて、何件がXKeyscorePRISM、6月におけるガーディアン報道などについて触れているかをカウントしたが、4686件のうちわずか25件であった。


筆者の予測では、NSAからキチンと情報を公開させる「上級者の」の多くは、PRISMなどは不開示決定が降りることがほぼ確実だと感じて開示請求もしなかったーーそのいっぽうでNSAになじみが薄かったり情報公開請求に慣れていない人は大量に「自分に関するNSAの傍受記録」を情報公開請求したーーためだと思われる。



(悔しいが、筆者より先にスノーデン文書関係への情報公開請求へ情報公開請求した方(Micah Green氏)がおられて、そのかたの情報公開請求が筆者の情報公開請求で開示されている。キャプチャ・下部を参照)


なお、この開示の結果見つかった他の開示請求に対する応答を見ると、一部の開示請求者は、情報公開法の使い方、または請求の量を理由に特殊な「リスト」入りをさせられて扱いが悪くなるようである。Partial Denial とあるので、文書自体は存在しているとわかった。


なお筆者の感想ではもっともパラノイア的に情報公開請求へ反応するのは、防諜機関のFBIである。これまで知る限りでは、海外在住の外国人からの請求へは絶対に難癖をつけて請求が不合理(Unreasonably descrived)として追い返された。なお、今回のNSAに対する筆者の情報公開請求が出されたのが2014年1月で、開示されたのが2015年2月である。文書量としては極めて多かったとは言えず、風化を狙って開示を意図的に遅めたのではないか、とも思われる。アメリカも決して、日本でときどき理想化するような情報公開のユートピアのような国というわけではない。



(開示したくない情報については、色々とこちら側がけっこうムッとするような難癖をつけて、費用減免を全くしようとしない。そして①あと26万円くらいまず払わないと調査は継続しない②ただしそれで新しい文書が出てくるかどうかは知らない③もし文書が出てきた場合にはコピー費などでさらに費用がかかる可能性がある、と言った調子で全力で開示するのを辞めようとするのがNSAの習性のようである。)


なお、最後に注目するべきは、今回(一部だけ開示された)暗号と通信傍受の専門家デイビッド・カーン(David Kahn)がNSAの情報公開担当官と1986年7月15日に交わした書簡である。カーンと言えばアメリカを代表する暗号解読の学者であり、主著「The Codebreakers」はNSAが出版差し止めを促したというエピソードが広く知られている(NSAについての専門家であるジェームズ・バンフォード(国防総省諜報局出身のジャーナリスト・元カリフォルニア大学バークレー校教授)がパズル・パレスに書いた)。そのためNSAというかアメリカの諜報機関からは警戒されている人物という印象が強いかった・・・・だがDear Mike,と砕けた調子で始まる情報公開請求書の第1パラグラフを見ると、フレンチを一緒に食べた話から切り出されていて拍子抜けする。


つまり、NSAの情報公開担当者とカーン氏は公私をともにする友人で、なおかつそのことはNSAの局内でも問題視されていない関係だったと言うことがこの文書から分かる。そして、この開示請求では日本のレッド暗号記(外務省が戦前に用いていた。国内では「暗号記A型という)についての研究のため、文書を出してくれというやり取りになっている。そして旧枢軸国について、傍受したやり取りを解読した物はルーズベルト大統領のもとに行ったという話や、大島大使(文脈上、駐ドイツ大使だった元陸軍の大島浩氏である)の話になる。



はて、ここからどのような文書が、デイビッドカーン氏に渡ったのか、そして「民間人」の立場にありながらカーン氏がそれ以降、NSAへどのような貢献をしてきたのか、さまざまな点はなお不明である。しかし、彼は一般に考えられてきたような在野(ただし、90年代からはNSAでの研究業務に公然と参加している)の学者では決して無く、むしろ米国政府とは長く友好的な関係を保ち続けていたものとみられる。(とすれば何かと、握りつぶされたりした研究や発見があったとしてもおかしくない)。世界はスノーデンがおそらく望むような、ニュートラルな場所ではなかなかあり得ないのだろう(そしてそれがまさしく、エドワード・スノーデン氏がNSAを飛び出した理由かもしれない)。


なお、開示請求の目的が営利かどうかにおいてなどの区別を行うのはアメリカ連邦情報公開法の定めるところであるが、NSAなどの場合はその運用の仕方が異様である。ようは、政府に近い人間をひいきしている疑いが極めて濃く、この運用は「パブリックに向けた情報の公開」という法の趣旨に沿っているというよりはインナーサークルでのなれ合いに筆者には思える(そして当然、そこには各種の不正が生じてくる)。


【江藤貴紀】


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