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【星座】色彩を持たないで、主人公が言葉も持たない映画が公開の日【11月9日】

2013年10月7日00時33分

【星座】色彩を持たないで、主人公が言葉も持たない映画が公開の日【11月9日】



「何を恐れることがあるのか」という声


日本の体感治安は、戦後でほぼ最悪(WSJ日本版)だという。しかし、実際の治安(粗暴犯、殺人犯の発生率など)はこれまでで最善(参照リンク:警察白書)なのである。にもかかわらずわたしたちは、根拠も十分にはなく、絶えず不安をかき立てられるよう煽動されている。


ここで紹介する「星座」の主人公マチはまさに、周囲から理由も無しに不安をあおられ続けるという点で今のわたしたちだ。だが一つ、わたしたちと違うところがある。それは彼女が、「恐れない」という点だ。


表層主義的に、この作品をメモしていくと以下のようになってしまう。まずマチという女が出てくるが、この女は耳が聞こえないらしい。海辺の造船所でブルーカラーの仕事についている。そこに刑事がやって来て、ラテン系風の男を捜す。どうも犯罪者なのだという。とくに彼女はそのことについて知らない。


加えて言うなら、この映画はモノクロなので、マチは色盲の可能性もある。しかし、叫ぶことが出来ることはわかる。ダンスをさせると実にセンスがあるようだ。彼女が踊る場面では、音楽が鳴り響いてくる。 お尋ね者らしい外国人の男が出てくる、それを彼女が見つける。男はフランス語しかしゃべれない・・・だがどのみち、彼女は聾唖だから、言葉が通じるかどうかは問題ではない


この出会いは非常に長く続き、カメラが回る続ける。長回しの映像で、カットが7分ほど続いたところで2人は打ち解けあって、エイリアンのように指さし合う。


この長回しは続き、見ているわたしがハラハラしてきた。そんなに長回ししていいのか、ある種の映画のルールに違反しているし、ミスがあったら撮り直しになるんじゃないかと。だがこれは勿論、見る側が作る側の都合を勝手に斟酌しているに過ぎない。わたしが勝手に、倒錯した心配をしていると言うことを自覚させられる。


マチは、18分の長回しの後に、危険な犯罪者と言われる異邦人と抱擁する。 その後、彼女は立ち飲み屋で嘔吐のような仕草をし、咳き込みだして倒れる。けいれんの仕草もする。翌日もけいれんは続いている。心配したユキコが、妊娠検査薬を使うよう勧める。そして、懐胎していることが分かる。そのことをマチは喜び、踊る。尻を振って原初的な喜びを表しだす。


・・・ さて、この作品の魅力を語るにはどうすればよいだろうとわたしが考えたとたん、自分が途端に自己検閲の奴隷になる。「映画の世界における規則違反を意図的にやってのけて、そこからの脱出を試みる作品」と書くと陳腐すぎるように思える。だが一方で、「気むずかしいことを言わずマチのダンスが表現する身体性の動きに見とれていればよいのだ」と言っても逆の方向で説教くさくなる気がする。


でも、おそらく友人に感想を聞かれたときのように、ただ「良かったよ」と書くのが一番素直だ。もし、それ以上に格好付けて語ろうとすると、無惨に失敗してしまうだけだろうとおもう。


【編集長 江藤貴紀】


 

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